はじめに

開業医の先生は最新の医療情報や医院経営に関することを学ぶため、学会へ出張することがあるかと思います。

そして、医院が成長すればするほど、そういった出張の機会は増える傾向にあります。

通常、出張した場合の経費としては「交通費」「宿泊費」「学会参加費」が発生しますが、経費としてはそれ以外に「日当手当」が計上されることもあります。

この日当手当は出張の準備に掛かる資金等も含まれるため、給与ではなく、必要経費として扱われる非課税扱いの項目です。

必要経費であるため、受け取り側の所得税が発生することがなく、支給する側としても人件費として計上されることがないのです。

このように出張に掛かる経費は名目を変えることで、支給側だけでなく、支給された側にとっても節税できるケースがあります。

さて、学会といえば日本国内での学校や医院で行われるケースがほとんどです。

しかし、世界の最新医療情報は日本からでなく、アメリカなどの海外から発信されることが多いため、海を越えた場所での開催も珍しくありません。

そこで今回は、海外出張において節税目的で旅費を経費として計上する際の注意点をお伝えいたします。

海外渡航費用は業務と観光で区別すること

近年、視察と観光を兼ねた海外視察ツアーを行う旅行会社が増えておりますが、本来視察と観光は支出する費用の目的が異なります。

では観光を兼ねた海外渡航費は、どのように処理をするのが良いのでしょうか?

海外へ出張する際、ほとんどの先生は研修だけでなく観光も兼ねて行かれますが、観光を兼ねた海外視察費の扱いについて、国税庁は以下のように定めています。 

法人の役員又は使用人が海外渡航をした場合において、その海外渡航の旅行期間にわたり法人の業務の遂行上必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行ったものであるときは、その海外渡航に際して支給する旅費を法人の業務の遂行上必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比等により按分(あんぶん)し、法人の業務の遂行上必要と認められない旅行に係る部分の金額については、当該役員又は使用人に対する給与となります。

※国税庁ホームページ「No.5388 海外渡航費の取扱い」より抜粋

※参考URL
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5388.htm

上記文章の通り、原則として「業務に関連する部分は旅費」、「観光に関する部分はその役員等の給与」と判断されます。

計上される項目によって非課税かどうかが決まるため、医院としては業務用か観光用かを区別できるよう、明確な判断基準を設けておく必要があります。

旅費を全額経費として証拠付ける方法

では海外出張において、業務と観光を区別する際、どのような方法があるのでしょうか?

その方法のひとつに、業務従事割合を用いた方法があります。

まず、海外渡航費における「損金算入額」と「必要経費算入額」をそれぞれ計算するために、日程を業務と観光の時間に分けます。

日数の区分については、昼間の通常業務時間(約8時間)を1.0日として、0.25日単位で日数を割り出します。

そして、割り出した日数を以下の計算式に当てはめて業務従事割合を算出します。

<業務従事割合の計算式>
視察などの業務に従事した日数÷(視察などの業務に従事した日数+観光した日数)

業務従事割合が50%以上であれば、「海外渡航が業務遂行上必要である」と判断され、「往復交通費と旅行費用に業務従事割合を乗じた金額」が経費として認められます。

海外出張の旅費を経費として計上することを明確にするためにも、業務従事割合が50%を満たすことが第三者に分かるよう、工程表に記録しておくことをオススメします。

領収書や工程表などは必ず保管しておく!

ではどんな渡航方法でも業務上の出張として認められるのかというとそうではありません。

下記に該当するものは、原則として「業務に関連するものではない。」とされているため、十分な注意が必要です。

(1)観光渡航の許可を得て行う旅行

(2)旅行あっせんを行う者等が行う団体旅行に応募してする旅行

(3)同業者団体その他これに準ずる団体が主催して行う団体旅行で主として観光目的と認められるもの

※国税庁ホームページ「No.5388 海外渡航費の取扱い」より抜粋

※参考URL
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5388.htm

ただし、実務上、わざわざ就労ビザを取得せず、観光用として出張される場合も多いかと思います。

そのため、業務への関連性を説明できれば、旅費としての計上は可能ではあります。

また、役員が親族や業務に常時従事していない者を同伴した場合、会社が負担した同伴者の旅費は特別な場合を除き「同伴させた役員等の給与」と扱われ課税対象となります。

海外渡航費は税務調査の際に必ずと言っていいほど確認される項目であるため、十分な説明や証拠となる書類がないと、最悪申告漏れとして追徴課税となる場合もあります。

そのためにも、第三者が確認して経費の名目を判断できるよう、以下については特にしっかりと書類を保管し、記録を残しておきましょう。

  1. 業務上必要な出張であるかが分かる資料
  2. 同伴者の必要可否を判断できるエビデンス
  3. 旅行会社などが発行した行程表
  4. 移動・宿泊・飲食でかかった経費の領収書

海外出張費計上の際の為替レートを判断する基準

また、海外出張でよく問題となるのが精算する際の為替レート。

為替レートにはメディアで日々公表されているTTS(外貨の買値)、TTM(仲値)、TTB(外貨の売値)、空港等の外貨両替専門店、クレジットカードなど、様々な種類が存在します。

法人税上は取引日のTTM(仲値)と規定されておりますが、現地で使った経費をその日の為替レートで計算するのは極めて煩雑なこと。

更に出張者はそもそも仲値を狙って外貨に両替する余裕はありません。

そのため、外貨の現金に両替したときのレートやクレジットカードの利用明細に記載されているレートを用いて精算されるのが一般的です。

出張旅費の精算時には、現地の領収書に加えて、両替時の明細書、クレジットカードの利用明細書のコピーを添付しておくことをオススメします。 

まとめ

今回は開業医の先生が学会等で海外出張へ行かれる際の注意点についてお伝えしました。

  1. 海外渡航費用は必ず業務と観光で区別する
  2. 業務従事割合を算出し、交通費が全額経費となるか明確にする
  3. 領収書やクレジットの明細書、工程表は必ず保管する

海外出張にかかってくる旅費や経費は上記を守ることができていないと、本来非課税対象であるのに課税対象の項目として見られる可能性があります。

ぜひ、今回お話したことを認知いただき、医院経営における節税対策に役立てて頂ければと思います。

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