はじめに

歯科医院の増収対策で欠かせなものの一つに、自費診療の割合を増やすことがあります。

歯科医院が自費診療を増やしたい背景として…

・「歯科医院の数はコンビニより多い」とはよく聞く話ですが、それだけ歯科医院の競争は激しいものになっています。

・歯科技術の向上、予防歯科の普及に伴い、健康な歯を持つ人が増えてきたため歯科医院に通う人が減っています。

・人口減、少子高齢化、成長しない日本経済……これらのことを考えれば、将来の保険制度の破綻は明白です。

この傾向は今後も変わらないと思われ、今後自費診療の割合を増やせない歯科医院は生き残ることは厳しいでしょう。

今回は、歯科医院の生き残りをかけた自費診療の割合を増やす方法について書きたいと思います。

先生の歯科医院のターゲットは誰ですか?

何も歯科医院に限った話ではありませんが、自費診療の割合を増やしたいのであれば、何と言ってもターゲット設定です。

これがないと、まず自費診療の割合を増やすことは不可能です。

ターゲット設定とは、具体的には「患者がどのような欲求を持っているか、そして何を得たいか」という患者視点の発想です。

なぜなら、人間は価値を感じるものであれば積極的にお金を支払いますが、価値を感じないものにはまったく反応しません。

特にモノに満たされた先進国の日本であれば、なおさらその傾向は強いでしょう。これは歯科医院でも同じです。

特に自費診療については、ただ単に「保険診療よりも料金が高い」というマイナスイメージが先行しています。

つまり、なぜ自費診療は高いのか、保険診療に比べてどのような価値があるかを知っている患者さんはほとんどいないのです。

ですから、闇雲に来院した患者さんに自費診療を勧めよう……なんてことは間違っても考えてはいけません。

自費診療を求めていない、保険診療で十分な患者さんに無理やり自費診療を勧めると、かえって不信感を持たれてしまい離脱の原因となり、

「自費診療を割合を増やしたい⇒患者さんに勧める⇒離脱され、売上を落とす」という悪魔の負のスパイラルに陥ります。

大切なのはターゲット設定です。

ターゲット設定が明確にできたら、今度は、その人に届くメッセージが何かを考えます。

このメッセージは自分で考えてどうにかなるものではありません。

一番重要なことは患者さんに聞くようにすることです。

その次に考えることが、ターゲットとなる患者さんが、どこでそのメッセージを見ているのか、ということです。

例えば、新聞の折込チラシでも、男性は新聞を読むでしょうが、女性は新聞をほとんど読まないとか。

高齢者ほどホームページやブログを見るようなことはないとか。

でも高齢者のご家族がインターネットで検索して勧めて来院することもあるから、ホームページはご家族に向けて文章を書くとか。

こういったメディア戦略も、ターゲットによって全然違います。

これは、3M(Market、Message、Media)というマーケティングでは有名な話なので、知っている人もいると思います。

このように、ターゲットをしっかり設定しないと、集患対策は思うようにいかないでしょう。

特に自費診療は単価が高い分、ターゲットは明確にしないといけません。

日頃から、患者さんのニーズを聞き取る努力をするようにしましょう。

自費治療を意識した歯科医院の院内掲示

自費治療の割合を増やしていくなら、歯科医院の院内掲示も変わってきます。

自費診療の割合を増やす取り組みとしては、

・保険治療と自費治療の見た目の比較
・使用する材料の耐久性や質感、価格等の違い

これらを明確に訴える「歯科治療の見える化」が必要です。

具体的には、豊富な診療メニューを取り揃え、パンフレットやリーフレットを受付や待合室に掲示します。

さらに、ユニットに座ったときの視線の高さに合わせて、患者さんに知ってもらいたい情報や興味を惹きそうな情報を掲示するようにします。

つまり、院内でも積極的にアピールするのです。

それで嫌な思いをする患者さんはほとんどいないでしょう。

ユニット周辺での情報提供は、じっくり読んでもらえる機会であるほか、患者さんの質問も増えるので、コミュニケーションの促進にもなります。

自費診療というと、ホームページやブログなどのオンライン集客も大事ですが、こういった院内掲示も重要です。

というのも、最初にターゲットになりやすいのは既存の患者さんだからです。

先にも書きましたが、重要なことは「患者がどのような欲求を持っているか、そして何を得たいか」を知ることです。

そういったことは、既存の患者さんの声を聞くしかありません。

まずは院内の掲示を変え、既存の患者さんから興味を持ってもらったらいかがでしょうか。

そうすることで、自費診療に興味のある患者さんとのコミュニケーションも増えるので、ターゲットに届くメッセージを考えやすくなります。

また院内掲示ですと、患者が自ら求めて得る情報ということになるので、医療広告規制の限定解除の対象にもなります。

歯科医院の患者さんとのコミュニケーション

次に、歯科医院の患者さんとのコミュニケーションの話です。

人間は感情の生き物です。よく、人間は感情でモノを買うと言われます。

患者さんに説明する際は、暗い表情や印象の悪い態度にならないようにします。

見た目の印象が悪いと、いくら診療内容の説明が良くてもマイナスになってしまいます。

これは単価の高い自費診療では、この傾向は特に顕著になってきます。

話し手の表情、話し方、声のトーンなど、思いのほか患者さんは見ています。

また院長先生は患者さんの悩み、どうなりたいかを明確に引き出すように、なるべく質問と傾聴に徹しましょう。

一番重要なことは先にも書いたように、「患者がどのような欲求を持っているか、そして何を得たいか」です。

患者さんのニーズがわからずに、いくら診療内容を説明しても、まったく患者さんには響きません。

むしろ、何か売り込まれたような気分になり、口コミで悪評が広まってしまいます。

患者さんのニーズに合わせた治療をする。これは必須です。

患者さんのニーズを引き出し、それに合った診療を提案するのです。

自費診療の割合を増やしたいなら、このことは必ず忘れないようにしてください。

歯科医院の口コミの評判を増やす方法

自費診療の割合を増やすということは、患者さんに対して値上げを行うことと一緒です。

だからこそ、患者さんのニーズをより明確に引き出す必要があります。

それだけでも歯科医院の口コミの評判は伝わるかと思いますが、口コミでの評判を広める方法はそれだけではありません。

患者さんを大切にする気持ちを、院内の雰囲気でも示すのです。

・待合室のアメニティ充実
・歯科医院内の空気清浄
・歯科医院内の土足化(お年寄りには喜ばれます)
・雨の日のタオルや傘の貸し出し
・暑い日の冷たいおしぼり
・ユニットサイドでのブランケットの貸出し
・キシリトールやリカルデントガムの試供品の提供

工夫できる点はたくさんあり、それだけではありません。

歯科医院内の雰囲気も、患者さんに合わせて良くするようにしていきましょう。

これは内装だけの問題ではありません。

歯科医院のスタッフとの人間関係も重要です。

人間関係は、思いのほか患者さんに伝わってしまいます。

もちろん、患者さんのいる前で怒鳴り散らすなんてもってのほかです。

歯科医院の雰囲気については、普段からの心がけが、患者さんの口コミに広がります。

雰囲気の悪いところで、ただでさえ高い自費診療を受けたいと思う人はいないでしょう。

自費診療を増やす歯科医院の広告(ホームページ、ブログ、チラシなど)

ここまで来たら、歯科医院のホームページに自費診療に関することを書いたり、ブログで役に立つ情報を発信していきます。

また、チラシなどのオフライン集客も同時に進めていきましょう。

歯科医院の自費診療というと、いきなりホームページで自費診療のランディングページでも載せましょうと言う人もいます。

これは間違いではないのですが、順番が違うと、まったく効果のないホームページ、チラシ作成になってしまいます。

しっかりと患者さんと関係性を築いて、患者さんの悩み、欲求を聞き出すようにしましょう。

これはスタッフさんにも手伝ってもらいましょう。

自費診療を求める患者さんの得たい未来(ベネフィット)をつかむには、こうした日々の関係性構築が必要です。

そこまでして、ようやくホームページの修正やブログ更新、チラシの作成ができます。

必ず、この順番を間違えないようにしてください。

またホームページというと、2018年の医療広告ガイドラインで、ホームページも規制対象とされています。

【関連記事】知らないと怖いホームページの医療広告規制5つのポイント

まとめ

以上、歯科医院の自費診療を増やす割合についてお伝えしました。

自費診療の割合を増やす手順としては、おおむね以下の通りになります。

(1)院内の雰囲気を良くしたり、患者さんとコミュニケーションを取り、患者さんとの関係性を構築する。

(2)内装をきれいにしたり、スタッフとの人間関係を良くして患者さんの心地が良い歯科医院を目指す

(3)患者さんの欲求、悩み、治療によって得たいものを聞き出す。ターゲットに伝わるメッセージは、患者さんの声でしか得られない。

(4)患者さんの声やターゲットに伝わるメッセージが出てきたら、ホームページの修正やチラシの作成をする。

覚えておいてほしいのは、ターゲットの欲求を聞き出すことなく、ホームページを作ったりチラシを作ってはだめということです。

これをやってしまうと、無駄に広告費を垂れ流すことになってしまいます。

どうせホームページやチラシを作るなら、ターゲットに伝わるメッセージを載せたものを作って、効率的に自費診療を増やしていきましょう。


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この記事の執筆・監修はこの人!
プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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