個人開業医の先生は、給与や賞与をもらっているわけではないので、自分で所得税および復興特別所得税を計算する必要があります。これが確定申告です。

特に開業直後の開業医の先生にとって、どのように所得税が計算されていくのか、かなり分かりづらいものです。

また、本記事でお伝えしているように、他の個人事業主にはない医師・歯科医師特有の仕組みもあります。

そこで、確定申告の基本として、医師の確定申告で、どのような流れで所得税が計算されていくかを解説します。

開業したばかりの開業医の先生や、これから開業しようとしている勤務医の先生は最後までご覧ください。

勤務医と開業医の確定申告の違い

開業医の先生の場合、1年間の医業収入から、人件費等の必要経費を差し引いた金額が「事業所得」として課税されます。

勤務医の先生であれば年間の給与が「給与所得」として課税されます。

勤務医の先生の場合は、年末調整を含めて所得税の計算は勤務している医療機関が行ってくれるので、基本的には確定申告の必要がありません。

この点が、勤務医の先生と開業医の先生の確定申告の大きな違いになります。

しかし、勤務医の先生でも以下の場合はなど確定申告が必要になるので、忘れずに行うようにしましょう。

【勤務医の先生が確定申告を必要とする場合】
・副業しており年間20万円以上の所得がある
・複数の病院に勤務している
・不動産所得など給与所得以外の所得が年間20万円以上ある
・年収2,000万円以上である
・不動産所得などの赤字を差し引いて所得税を少なくしたい

開業医の先生の所得税計算の流れ

次に、開業医の先生の所得税計算の流れについてお伝えします。

先ほどお話したように、開業医の先生は、個人事業主になるので、所得区分が給与所得ではなくて事業所得になります。

事業所得に加えて、賃貸用不動産を所有していれば不動産所得、株式を保有していれば配当所得、原稿料や講演料をもらった方は雑所得として申告します。

また、開業医の先生でも、他の病院やクリニックにアルバイトに行っていれば給与所得を申告することになります。

これらを含めた所得税の計算の流れを説明すると、次の図のようになります。

※出典 東京税理士会HPより抜粋

事業所得に焦点を絞ると、おおむね以下のような流れになります。

事業所得
  • (A)事業所得の金額の計算:事業所得=①総収入金額-②必要経費
  • (B)課税標準の計算:③損益通算 ④純損失または雑損失の繰越控除
  • (C)課税所得金額の計算:⑤青色申告特別控除 ⑥所得控除
  • (D)税額の計算:⑦課税所得×⑧税率-⑨控除額
  • (E)税額控除の計算:⑩住宅ローン減税などの税額控除

①~⑩について順を追って説明していきます。

①事業所得の総収入金額

事業所得の総収入金額は、医院・クリニックの主な収入を合計したものです。

医院・クリニックの主な収入には、「保険診療収入」「自由診療収入」「雑収入(医療行為以外の収入)」の3つがあります。

保険診療収入・社会保険診療報酬
・国民健康保険診療報酬
自由診療収入・自費診療、人間ドック、予防接種、医療相談料、差額ベッド代
・労災、交通事故、公害医療
・人工妊娠中絶(ただし胎児死亡により搔爬手術が必要な場合、母体の生命を脅かす場合は保険診療収入)
・保険証を持参しない場合の診療
・地方自治体から支給される報酬
・老人保険証に定める医療以外の保健事業
・家族などに行った診療代
雑収入・公費負担医療の事務手数料
・介護保険法に基づく認定調査料
・患者紹介料
・診断書の作成手数料
・院内の自動販売機設置手数料
・(歯科の場合)金属類の売却代金
・健康食品、化粧品・美容液、歯ブラシなどの販売

②必要経費

①で得た収入から、必要経費を差し引いた金額が事業所得として課税対象になります。

ただし、医院・クリニックの場合、一般の個人事業主と異なり、必要経費の計算方法が2つあります。

必要経費の計算方法2つ
  • (1)「社会保険診療報酬の概算経費の特例」を適用する場合
  • (2)収支実額計算による場合(実額経費の計算)

これらのうち、どちらか有利になるほうを選択できます。

なお、社会保険診療報酬の概算経費の特例を適用し、算出する際には、青色申告決算書付表(医師・歯科医師用)」を用います。

所得税青色決算申告決算書(一般用)付表≪医師及び歯科医師用≫

こちらを、他の個人事業主と同様に提出する青色申告決算書とともに確定申告書に添付して提出する必要があります。

社会保険診療報酬の概算経費の特例

「社会保険診療報酬の概算経費の特例」とは、「社会保険診療報酬が5,000万円以下」、かつ「自由診療収入と雑収入を含めた報酬総額が7,000万円以下」の場合に適用される、開業したての個人開業医に有利になることが多い特例です。

特例を適用するかどうかは、毎年選択することが可能です。

ただし、社会保険診療報酬の概算経費の特例を適用した場合は、後述する青色事業専従者給与を適用できないので注意してください。

また、概算経費の特例を適用する場合でも、自由診療など社会保険診療報酬以外に関わる経費は実額経費を算出しなければなりません。

そのため、いずれにしても必要経費の計算は必要となります。

社会保険診療報酬の概算経費の計算方法

以下に、概算経費率の速算表について示します。

社会保険診療報酬概算経費率の速算表
2,500万円以下×72%
2,500万円を超え3,000万円以下×70%+50万円
3,000万円を超え4,000万円以下×62%+290万円
4,000万円を超え5,000万円以下×57%+490万円

実額経費の計算では、医業にかかる収入の必要経費は、「社会保険診療報酬」「自由診療収入」それぞれにかかる「固有の経費」と「共通の経費」にわけて考えます。

「共通の経費」は、経費の種類に応じた基準により、按分して所得計算します。

按分する際の各々の割合については、収入割合や診療実日数割合等を基準として、簡便法を用いて、以下の計算式にて求めます。

自由診療割合=(自由診療の収入金額(または自由診療実日数))÷(総収入金額(または総診療実日数))×調整率

調整率は、自由診療のほうが社会保険診療よりも単価が高いことを考慮し、次のように決められています。

診療科目調整率
内科、耳鼻咽喉科、呼吸器科など下記以外(美容整形を除く)85%
眼科、外科、整形外科80%
産婦人科、歯科75%

※出典:所得税青色申告決算書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》記載要領

「社会保険診療報酬の概算経費の特例」と「実額経費」の計算比較

次の内科開業医の年収と必要経費を例に、実際に「社会保険診療報酬の概算経費の特例」と「実額経費」の計算をして、どちらが有利なのか見てみましょう。

診療科目:内科

収入必要経費
社会保険診療報酬収入3,000万円共通経費1,700万円
自由診療収入2,000万円自由診療のみに係る経費300万円
合計5,000万円合計2,000万円

(1)概算経費の計算
社会保険診療報酬が3,000万円なので、概算経費は

3,000万円×70%+50万円=2,150万円

(2)実額経費の計算
(自由診療割合)
自由診療収入2,000万円÷総収入5,000万円×内科調整率85%=34%

(共通経費のうち自由診療部分)
1,700万円×34%=578万円

(自由診療部分の必要経費)
300万円+578万円=878万円

(社会保険診療部分の必要経費)
2,000万円-878万円=1,122万円

概算経費と実額経費の計算結果を比較すると、概算経費のほうが2,150万円-1,122万円=1,028万円ほど多く経費として計上できるのがわかります。
このように、概算経費の特例は個人開業医に有利になることが多いのです。

一方で、医療法人などでは院長個人に対する役員給与等も実額経費として計上され、個人開業医と比べて多くなります。

そのため概算経費が実額経費を上回ることはほとんどなくなり、医療法人で概算経費を適用するケースはほとんどありません。

開業医の必要経費

「必要経費」の内容を少し詳細に知っておきましょう。

原則として、必要経費は事業所得を得るために業務上必要とされるものでなければなりません。

開業医に認められる必要経費のうち代表的なものについて紹介します。

なお、開業時の借入金の返済については、経費として扱わず、負債から返済額を差し引いていくという形で処理します(返済時の利息部分は経費になります)。

人件費

人件費はスタッフへの給与だけでなく、法定福利費(雇用保険・厚生年金など)、福利厚生費(社員の飲食代、忘年会、新年会など)も含みます。

医院・クリニックでは、売上の20~25%が人件費にかかると言われています。

なお、日頃の業務の労いも込めて、給料日にスタッフ1人1人に給料を手渡しする先生もいらっしゃるでしょう。

しかし、現金払いにすることでお金の移動が可視化しづらくなるため、税務調査時に架空人件費と疑われる可能性があります。

給与明細書の控えなどの証拠を保存するようにしましょう。

青色事業専従者給与

それでは、家族が一緒に働いている場合の人件費はどうなるでしょうか?

原則として、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金は必要経費になりません。

しかし、以下の条件が揃っていれば必要経費として特に認められます。

それが青色事業専従者給与です。

妻が同じクリニックで働く個人開業医の医師であれば、知っておきたい特例です。

青色事業専従者給与を計上する条件は次のとおりです。

青色事業専従者給与を計上する条件
  • ・青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  • ・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  • ・その年を通じて6カ月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の事業に専ら従事していること

また、先ほどもお伝えしたように、社会保険診療報酬の概算経費の特例と青色事業専従者給与は同時に適用できません。

そのため、概算経費の特例とどちらが節税上有利かについては、次のように比較検討するといいでしょう。

  1. 実額経費(青色事業専従者給与計上前)>概算経費
    ⇒青色事業専従者給与を計上すれば、実額経費が必ず有利に
  2. 実額経費(青色事業専従者給与計上前)+青色事業専従者給与>概算経費
    ⇒実際に双方を計算し、有利なほうの検討が必要
  3. 実額経費(青色事業専従者給与計上前)+青色事業専従者給与<概算経費
    ⇒青色事業専従者給与を計上しても概算経費が上回るのであれば、必ず概算経費が有利に

青色事業専従者給与は税務調査の際、チェックされやすい項目の1つです。

もし税務調査が入った場合、青色事業専従者給与については「専らその事業に従事しているかどうか」が争点となります。

業務量が極端に少ない、資格を保有しているが勤務実態がない等の理由により税務調査で否認されることもあります。

家族の就業状況もタイムカードや業務日報等の客観的資料を残しておくようにしましょう。

青色事業専従者給与については、こちらの記事も併せてご覧ください。

【関連記事】【専従者給与】開業医の妻の給与を経費にできる要件と3つの注意点

家賃・設備費

人件費の次に大きな経費となるのが家賃・設備費です。家賃・地代・駐車場、水道光熱費、リース料、医療機器やコピー機などにかかる金額です。

このうち、医院・クリニックの内装や医療機器、自動車など、数年間にわたり使用するものは減価償却費として処理します。

医院兼自宅など、「事業用の支出」と「私用の支出」が混在する家事関連費はどうでしょうか?

固定資産税、修繕費等が発生すれば、医院と自宅の床面積の割合により按分することになります。

また、水道光熱費は使用ワット数、使用時間、電灯数等によって按分します。

もう1つ、事業用(通勤や訪問診療など)と私用で混在しやすいのが自動車です。

自動車については、走行距離の割合に応じて按分するのが基本的な考え方です。

毎日の走行距離がほぼ一定であれば、「診療日は事業用、休診日は私用」と使用日数で按分しても良いでしょう。

この按分の考え方は、車両費(ガソリン代、車検費用、保険料、メンテナンス費用)、カーリースについても同じことが言えます。

ただし、医療法人化した際は、事業用と私用で明確化できるため、事業用の自動車として100%経費にできることが多くなります。

【関連記事】節税&節約したい開業医必見!自動車選びにおける3つのポイント

なお、自動車の場合は減価償却費として処理し、新車であれば6年かけて処理しますが、カーリースは減価償却資産とはなりません。

これはカーリースで乗る車は、あくまでもリース会社の所有物で固定資産とならないためです。

つまり、毎月支払うリース料は全額、年内に経費にできるので、計上方法が分かりやすく節税効果の高い方法と言えます。

また、資金繰りの点でもカーリースの方が車両を一括購入するより有利なので、特に開業直後の個人開業医の先生は検討の余地があるでしょう。

その他の経費

その他、必要経費として考えられるのは次のような費用です。詳細な税金対策については後述します。

・租税公課(固定資産税、自動車税など)
・旅費交通費(交通費やホテル代)
・通信費(電話料金など)
・広告宣伝費(看板掲載料、パンフレット作製費用)
・損害保険料(火災保険料、自動車保険料)
・車両費(ガソリン代、車検費用、保険料、メンテナンス費用)
・修繕費(内装などの修繕費用)
・消耗品費(薬剤費・医療器具費・文房具費など)
・利子割引料(借入金の1年分の利子)
・接待交際費:交際費の領収書に相手先や人数、目的を記載すれば可能
・諸会費(医師会・歯科医師会費等)
・支払手数料(銀行の手数料、税理士の報酬など)
・教育研修費(学会参加費用、スタッフの教育研修費、書籍代等):大学院に通う場合の学費は不可
・贈答費

必要経費とは認められない例

必要経費として認められないものもありますので注意が必要です。

以下、必要経費としては認められない支出例について簡単に列挙します。

・実態が「出張」ではなく「旅行」の場合の旅費交通費等
・「出張」に不要な同行者の旅費交通費等
・仲の良い仲間とゴルフに行っただけ等、仕事と関係のない接待交際費
・大学の同窓会費
・大学院入学時の学費

医師会・歯科医師会に関する会費や組合費もそれなりの金額になります。

必要経費に計上できるかどうかについては、次表の通りです。

経費必要経費計上の可否
医師会・歯科医師会の入会金必要経費になる(繰延資産で5年均等償却)
医師会・歯科医師会の会費
学校医・学校歯科医会費
医師賠償保険料
協同組合会費
必要経費になる
医師会・歯科医師会の福祉共済負担金
医師会政治連盟・歯科医師会政治連盟会費
必要経費にならない

なお税務調査では、消耗品費、接待交際費、旅費交通費などは非常にチェックされやすい項目です。

例えば仕事の関係のない仲間とゴルフに行って接待交際費として処理した、電車通勤以外でSuicaやPASMOを使ったが全額経費にした……

このような曖昧な経費処理で税務調査時に指摘されることが今でも多いです。これらについては簡単に調べられるためです。

ゴルフについては、ゴルフ場に聞けば誰とプレーしたかはすぐわかりますし、SuicaやPASMOも何にお金を使ったかはすぐ明細がわかります。

悪意はなくても、曖昧に感覚的に処理してしまうことで、ミスしやすいところなので注意しましょう。

経費処理については、以下の記事でも詳しく書かれているので、併せてご覧ください。

【関連記事】“節税”と”脱税”は紙一重|これは経費にできるか? できないか?

③損益通算

ある所得の中にマイナス(損失、赤字)があった時に、それを他の所得から差し引くことを損益通算と言います。

例として、不動産所得の赤字を事業所得から差し引く損益通算がよくみられます。

ただし、上記の所得税計算の流れからわかるように、株や不動産の譲渡による損失は事業所得から差し引くことができません。

④純損失または雑損失の繰越控除

損益通算をしても損失になることを純損失と言います。

開業直後は、売上高よりも経費の方が多くなり、赤字になってしまうこともあるでしょう。

純損失については、青色申告書を提出していれば、損失を3年間(医療法人の場合は10年間)繰り越して、その後所得が出た年の税額を抑えることができます。

しかし、被災事業用資産(災害で被害を受けた事業用資産)の損失などの場合、青色申告の有無に関わらず、繰越控除を受けられます。

また、雑損失とは不幸にも災害や盗難のような災難に遭って大きな損失があった時、その年のマイナスだけでは吸収できない場合に計上できます。

雑損失は、青色申告の有無に関わらず、損失を3年間(医療法人は10年間)繰り越すことができます。

⑤青色申告特別控除

青色申告であれば、青色申告特別控除が受けられます。

青色申告特別控除には、以下のように3段階の控除額があります。

10万円下記「55万円の青色申告特別控除」および「65万円の青色申告特別控除」の要件に該当しない場合
55万円(1)不動産所得または事業所得であること
(2)複式簿記により記帳していること
(3)複式簿記に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付していること
65万円「55万円の青色申告時別控除」の要件を満たし、さらに電子帳簿保存を行うかe-Taxを用いて確定申告をしていること

⑥所得控除

所得控除とは、一定の要件にあてはまる場合に所得の合計金額から一定の金額を差し引く制度
のことです。所得控除には次の種類があります。

種類控除を受けられる場合
雑損控除災害や盗難、横領により住宅や家財などに損害を受けた場合。
(1)(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
(2)(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円
※雑損控除とは別に、所得金額の合計額が1,000万円以下の場合、災害減免法による所得税の軽減免除があり、納税者の選択でどちらか有利な方法を選べる。
医療費控除一定額以上の医療費等の支払いがある
セルフメディケーション税制
社会保険料控除健康保険料や国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料、介護保険料、国民年金保険料などの支払がある
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済法の共済契約に係る掛金、確定拠出年金法の企業型年金加入者掛金及び個人型年金加入者掛金、心身障害者扶養共済制度に係る掛金の支払がある
生命保険料控除新(旧)生命保険料や介護医療保険料、新(旧)個人年金保険料の支払がある(最高12万円)
地震保険料控除地震保険料や旧長期損害保険料の支払がある
寄附金控除国に対する寄附金やふるさと納税(都道府県・市区町村に対する寄附金)、特定の政治献金などがある。寄附金特別控除(税額控除)といずれか有利な方をせんたくすることができる
寡婦・寡夫控除寡婦又は寡夫である(27万円の控除)
勤労学生控除勤労学生である(27万円)
障害者控除本人や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である
・障害者:27万円
・特別障害者:40万円
・同居特別障害者:75万円
配偶者控除以下の控除対象配偶者がいる場合に適用され、本人の合計所得金額(900万円以下)によって控除額が変わる。
(1)民法の規定による配偶者であること
(2)納税者と生計を一にしていること。
(3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
配偶者特別控除配偶者控除の適用がなく、本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円(令和元年分以前は38万円)を超え、76万円未満である
扶養控除控除対象扶養親族がいる場合、38~58万円の控除が受けられる
(1)配偶者以外の親族または里子や市町村長から養護を委託された老人
(2)納税者と生計を一にしていること。
(3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)である(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
基礎控除・2,400万円以下:48万円
・2,400万円超2,450万円以下:32万円
・2,450万円超2,500万円以下:16万円
・2,500万円超:0円
※令和元年分以前の基礎控除の金額は、納税者本人の合計所得金額にかかわらず、一律38万円

(国税庁ホームページより引用)

税額=⑦課税所得×⑧税率-⑨控除額

①総収入金額から上記②~⑥の金額を差し引いた数字が、⑦課税所得となります。

以下の所得税の速算表を用いて、1年間の所得税の金額を計算します。

⑦課税される所得金額⑧税率⑨控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え4.000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

(国税庁ホームページより引用)

税率については所得税のみ示しています。実際には、これに所得税額の2.1%の復興特別所得税が付加され、さらに10%の住民税がかかります。

⑩税額控除

ここまでで税額の計算ができました。

最後に、税額控除があればそれも差し引くことができます。代表的な税額控除としては住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)や配当控除などがあります。

また、寄付については、寄附金特別控除(税額控除)か、寄附金控除(所得控除)のどちらか有利な方を選ぶことができます。

一般的には税額控除の方が有利になることが多いです。

【まとめ】開業医に特化した確定申告の流れを把握する

以上、開業したばかりの開業医の先生が、最低限知っておくべき確定申告の基本的な流れについてお伝えしました。

特に開業したばかりの先生は「社会保険診療報酬の概算経費の特例」など、一般的な個人事業主とは違う点もあることを把握しておきましょう。

勤務医から開業医に転身したら、給料で天引きされるようなこともありません。先生のクリニックの利益については、翌年に支払う必要のある税金も考慮する必要があります。

自費診療の収入が多い先生は消費税も考慮しなければなりません。

翌年にかかる税金を考えずに、設備投資や借入金の繰り上げ返済をしてしまうと、思った以上に利益が残らないことがあるので注意しましょう。

また、申告漏れなどがあった場合は延滞税・加算税が課される点も注意して、正しく税金対策をしてください。

【関連記事】【医師の申告漏れ】不適切な確定申告で発生する延滞税・加算税とは?

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この記事の執筆・監修はこの人!
プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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