はじめに


「病院の玄関、受付を設ける際に気を付けることは?」
「トイレにはハンドドライヤーとペーパータオル、どちらを設置すべきか?」
「診療室の机はどのように設置すると、使い勝手がいいか」

受付、会計、待合、診察室、トイレ、処置室、X線室、CT室、レントゲン室、手術室、リハビリ室…病院内には様々な部屋が必要となります。

病院内のレイアウトを検討する際に出てくる疑問は、細かいことを入れると切りがないでしょう。
ここでは、それらのレイアウトを決める際に押さえておくべき項目をチェックリスト形式で解説します。

病院内のレイアウトで気を付けるべきこととは?

病院内のレイアウトを検討する際には、必要な設備や部屋を洗出し、うまく配置するようにします。

患者さんの導線を想定し、玄関→受付→待合→診察→待合→会計→玄関といった流れがスムーズになっているかを確認しましょう。
さらに患者さんの導線が、診察や処方、処置室や手術室へのドクターやスタッフの導線、伝票や現金の授受等の病院事務の導線とぶつかることのないよう、しっかりシミュレーションしてください。

受付・会計

受付・会計は病院の顔であり、ここで最初の印象が決まってしまいます。
オープンカウンター方式とし、親しみがありつつもホテルのフロントのような感じが出せると良いでしょう。もちろん、書類やPCの画面が患者さんから見えないような工夫も必要です。

開放感を出すため、なるべくオープンカウンタータイプが望ましい。

外部からの人の出入りが把握できる。

待合の患者さんの様子が把握できる(具合の悪化等がすぐに分かるよう)。

カルテや伝票の受渡で診察との導線がつながっている(患者さんの導線とぶつからない)。

カウンター内の事務作業やパソコン画面、内部の書類が、患者さんから見えないようになっている(そのために、カウンターの高さを出す、書類棚を患者さんから見えない位置に設置するなど)。

患者さんの荷物(杖やバッグ)などの置き場がある

コピー機やFAX、スキャナなども、プリントしたものが患者さんから見えない位置にある。

足の悪い患者さんが多いなど、診療科によっては患者さんが座って会計ができるようになっている。

院内情報等の提供のため、掲示板やテレビモニターを設置する。

子供の利用が多い診療科(小児科、耳鼻咽喉科、産婦人科等)は、キッズスペースの設置を検討する。

小児科、産婦人科等、乳幼児が多く来院する場合は、授乳室の設置についても検討する。

待合室

待合は、患者さんにとって重要な場所であり、診察までの時間をストレスなくゆったりと過ごせるような工夫が必要です。ゆとりある空間を演出するよう、検討してください。

壁に絵などを掛けて見られるように(可能なら中庭等の景色が見えると良い)。

雑誌を置いたり、観葉植物を置いたりするなど、患者さんがゆったり待てる工夫をする。

患者さん同士目が合ってしまうことのないレイアウトにする(トイレから出てきた患者さんとも目が合うことのないレイアウトに)。

待合から診察室が離れている場合や、耳鼻咽喉科など多くの患者さんを短時間で診なければならない診療科、小児科など前もって準備が必要な診療科では中待ちの設置を検討する(診察室の前の廊下部分等に椅子を置くなど)。

トイレ

トイレは建物全体の格を決める上で非常に重要です。建物がきれいでもトイレが狭く、汚いと全体の印象がかなり悪くなってしまいます。
豪華にし過ぎる必要はありませんが、清潔感や使いやすさ、ある程度の広さを念頭に置いて設計してください。

トイレはできれば男女別々にする(規模や予算的に難しいこともある)。

産婦人科等では、尿検査専用の部屋の設置を検討する。

採尿部屋を兼ねる場合は、パスボックス等を設ける(採尿カップを持って患者さんが、受付のある部屋や待合室に出てくることのないようにする)。

車椅子でも入れるようになっている(車椅子専用のトイレを設けられない場合は、車椅子でも入れるようにする)。

トイレのドアを開けても、待合や受付から中が見えない配置にする。

おむつ交換用ベビーシートやベビーチェアの併設を検討する。

衛生的であるため、蛇口は自動式を検討する。

ハンドドライヤーを設置する(ペーパータオルはごみの問題があるため)。

床材には、汚れに強い素材を使用する。

照明は人感センサー式を検討する(消し忘れがなく電気代を節約できるため)。

換気扇のスイッチは患者さんが触れないところに設ける(臭いがこもったり他へ流れたりするのを避けるため、換気扇は常に作動させておくこと)。

診察室

診察室は、できれば外からの採光を取り入れ、明るい空間になるようにしてください。
また、防音扉を設置するなどして、他の患者さんに診療内容が聞こえないようにするなど、プライバシーを重視した作りにすることが望ましいでしょう。

診察室の数は同時に診察を行うドクターの数+1を目安とする(検査を行って結果待ちの場合に他の患者さんを診るなどが可能)。

入り口は引き戸、内開き戸にする(患者さんが入ってくる様子が見えるように、また、ドクターの前側から患者さんが入ってくるようにする)。

防音扉を設置するなどして、他の患者さんに診療内容が聞こえないようにするなど、プライバシーに気をつかう。

診療室の奥に、処置室や職員が行き来できる裏導線用通路を設ける。

通路と診察室はカーテンもしくは壁で仕切る。

通路部に作業カウンターを設ける(電子カルテやオーダリングシステム用のPCを設置することを想定)。

大きめのサイズの診察机、書類棚、処置ベッド、脱衣かご等を置く。

書類を書く関係上、利き腕と反対側に患者さんが来る配置にする(患者さんと向き合いやすく、書類を書きやすいため)。

処置室

処置室は、採血、注射、血圧測定、点滴、心電図、脈波測定等、行う予定の処置や検査内容により必要な大きさと設備を検討してください。
具体的に置くものや機種を想定して細かく寸法を検討し、設計してください。

一般的には、処置ベッドを並べて、カーテンレールで仕切る。

点滴を行う患者さんが多い場合は、点滴室を別途設ける。

作業カウンターを作り、点滴の準備作業や機材の洗浄、消毒ができるスペースを設ける

また、作業カウンターには、アンプル類、注射針、点滴材料等の置き場も設ける。

機材を洗浄するための流し台、オートクレープ、冷蔵庫、ゴミ置き場等のスペースを確保する。

外科等で外傷処置や小手術を行うために無影灯を設置する場合は、天井に専用の下地を設ける。

X線室・CT室

X線を使用する診療室(X線室、CT室等)については、「放射線障害の防止」のため法律でいろいろな放射線防護の規制がなされています。これに反すると罰則が科せられ、最悪の場合は施設の使用停止処分が下る可能性があります。
したがって設計に関しては細心の注意が必要です。

室外への放射能漏れを防ぐために、天井・床・壁面、出入り口のドアの内側に鉛のシートを貼る防護工事を行う。

配管等の穴やコンクリート自体の施工精度が悪い場合は、鉛シートによる防護工事を行う。

ボードの継ぎ目やドアの枠の部分、照明やコンセント、スイッチ類の設置の際に等、放射能が漏れやすいところにも防護工事を行う。

放射能の漏れがないかどうか、X線室完成後に漏洩線量測定を行う(測定結果は保健所への提出書類に添付が必要)。

ブッキーテーブル(撮影中にグリッドを動かす機能付きの撮影テーブル)の前後左右に技師や職員が入れるスペースを設ける。

車椅子での移動(導線)も考慮してレイアウトを決定する。

装置搬入のために、幅1.2m×高さ2.0mのものが通ることのできる通路幅や出入り口を設ける。

装置の重量に耐えうる構造にする(一般的に装置は1t以上あるため)。

手術室・前室

手術室については、往々にしてオーバースペックになってしまいやすい傾向があります。
手術内容に対して必要のない過剰な設計とならないよう、ドクター仲間や他の設計者、施工業者の意見を聴き、過剰な設備投資を避けるようにしてください。

手術の内容に求められるクリーン度を達成する(バイオクリーン手術室や無菌室までは必要ないことが多い。ある程度のクリーン度を要求される手術を行う手術室では、HEPAフィルターを組み込んだパッケージ型の空調設備を設置することで、クラス10,000~100,000程度は確保できる)。

手術室に入る前に前室を設け、クリーン度を段階的に高めることも検討する(前室を設けると、前室で手指洗浄や消毒、脱衣、更衣等も行える)。

手術室への入り口を、フットスイッチにて開閉できる自動ドアにする(手を清潔に保つため)。

先生やスタッフが出入りしやすいよう、入退室のルートを検討する。

清潔・不潔ゾーンを区分する。

ホコリの入らない手術室用の照明を設置する。

コンセントなどの電気回路は他の部屋と系統を分け停電対策する。

使用する機器が多い場合は専用の分電盤を設置する。

酸素、笑気、吸引などのパイピングを行う場合は機械室の大きさや配管経路をメーカーと打ち合わせしておく。

リハビリ室

リハビリ室は機器をいかに効率良く配置するかによって、患者さんの使いやすやスタッフの作業効率が変わります。ドクター、機器メーカー、設計者としっかり打合せをして、機器の選定やレイアウトを行っていってください。

整形外科等で、多数の医療機器が設置されるので、設置する機器を想定して電気容量を見積もる。

テナントの場合は、ビルから供給される電源容量で足りるか、足りない場合は増やせるかを確認しておく。

水治療法やほっとパックを温めるためのウォーマーを使う場合は、給水や排水の設備を設ける。

高齢者や体の不自由な患者さんのことを考慮し、バリアフリー設計とする。

通路部分の壁面に手すりを設置する(歩行訓練にも利用できる)。

ソファにも手すりを付け、杖を固定するホルダーの設置も検討する(少し座面を高くしておくと座る・立つといった動作が楽になる)。

倉庫や収納棚などの収納場所を多めにする(タオル等のリネン類の使用も多く、消耗品のストックや松葉づえ等の収納が必要)。

まとめ 過剰投資を避け、使い勝手の良いレイアウトを実現しよう

病院内のレイアウトを決定していくうえで押さえておくべき項目について解説してきました。

設備や部屋については、お金をいくらでもかけられるところではありますが、一方で予算の上限を設けて検討していかないとすぐに予算オーバーになってしまう危険も高いものです。

業者によっては、「患者さんのため」「将来のため」「病院の評判のため」などと言って、オーバースペックとなる設備や設計を勧めてくるところもあります。

他のドクターや施工業者、メーカーなどの話を聞きながら、慎重に設計を進め、使い勝手の良いレイアウトを実現していってください。

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プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢42人(R2年4月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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