はじめに

他のクリニック・医院の経営者、あるいは他業界の経営者から、国から補助金が支給されたという話を聞かれたことはないでしょうか。
返すことなく事業資金が得られる補助金は、多くの経営者にとって魅力的なものです。

新しい事業のチャレンジを応援することが、大きな補助金の目的の一つです。

多くの補助金は経済産業省管轄のものなので、医療業界にはあまり関係ないと思われるかもしれません。
しかし、医療業でも補助金は利用できます。うまく活用しているクリニック・医院は、他のクリニックが自前で出している費用を補助金で出しているのです。

今回は、医療業でも使える補助金と、その内容について解説します。

融資・助成金・補助金はどう違う?

クリニック・医院の経営でも、資金調達は大事なことの一つです。新しい設備を入れたり、従業員を雇おうとしても、資金が不足しているとできません。

資金調達には、融資のほか助成金、補助金などがあります。それぞれは、どう違うのでしょうか。

融資は、主に金融機関から事業に必要としている資金を借りる行為です。もちろん、借りるからには返済が必要になります。

助成金(ここでは主に厚生労働省関係のものを指します)とは、従業員の雇用や教育など、採用や育成に関して、条件を満たす取り組みを行った場合等に資金が支給されるものです。支給された助成金は、返す必要のない「もらえる」ものになります。

そして補助金(ここでは主に経済産業省関係のものを指します)は、特徴のある新しい事業を行ったり、新規設備を導入したりする場合に、認められた計画が採択され、「もらえる」というものになります。(補助金の事業で一定以上の収益を上げた場合には、返還するという注意書きがある補助金もあります)

注意点として、補助金は実際に行ったことに対して支給される、後払いになるものがほとんどということがあります。そのため最初に費用を用意する必要がありますが、補助金の受給が決まっていれば、金融機関からの融資も受けやすくなると考えられます。

また、補助金は掛けた費用の全額ではなく一定割合が受給されるものがほとんどです。例えば、ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金は、補助上限額が最大1,000万円、(条件によりますが)補助率3分の2の補助金です。1,500万円(税抜)を使う事業計画を実行して認められると、3分の2の1,000万円が受給できることになります。

そのため、必要もないのに補助金を使うのは意味がありません。何かを行いたいという場合に、その補助と考えるのがよいでしょう。

融資、助成金、補助金のどれもが、毎年のように制度変更が行われています。最新情報はホームページを見たり専門家から情報を得るなどするのがよいでしょう。

クリニック・医院の運営や開業時に使える補助金

ここでは、国(主に経済産業省の中にある中小企業庁)が幅広く募集している補助金で、クリニック・医院の開業・運営が対象となるものについてご紹介します。
(名称等は2018年度に実施されたものを表記しています)

ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金

年度ごとに名前が変更することがありますが、通常『ものづくり補助金』と呼ばれているもので、最大1,000万円が受給できる補助金になります。補助率は最大3分の2です。
『中小企業・小規模事業者が取り組む生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等の一部を支援する』という名目の補助金になっています。

設備導入を目的として使われることが多い補助金ですが、クリニック・医院でも、個人事業主の方は応募可能です。逆に医療法人では応募ができません。

それでは、採択される計画はどのようなものなのでしょうか。
今までクリニックや医院で採択されている計画のタイトルを見ると、以下のようなものが多いようです。
・設備を導入することによって、既存のあるいは新規の患者様に新しい治療やサービスを提供する計画
・新しい治療方法や管理を行うための機器の導入を行う計画

この補助金は、設備により新しい治療を提供することが多いことや、設備の金額などから、歯科で利用されることが多いようです。

IT機器や専門機器などの設備を導入して、新しい取り組みをされるクリニックや医院では検討の余地に値するものでしょう。

IT導入補助金

生産性向上のためのソフトウェア、サービス等を導入する事業に対する費用を補助してくれる補助金です。

具体的には、ソフトウェア、サービス等を提供するIT事業者が登録したソフトウェアやサービスである「ITツール」の導入を行う場合が対象になります。
登録されたIT事業者の中から、導入を依頼する業者を選ぶことになります。
「ITツール」には、ホームページ制作や予約管理、在庫管理、患者情報管理、レセプト処理、財務会計システムなどがあり、2つ以上の機能を組み合わせたものが必要とされています。

ポイントは、IT事業者が登録した「ITツール」を使うため、事前に依頼するIT事業者を決めておく必要があることです。
IT事業者と一緒になって申請を進めることになるので、ある程度サポートを受けながら申請できる可能性が高くなります。

補助金額は2017年度は100万円だったのですが、2018年度は最大50万円になりました。補助率は2分の1となっています。
中小企業庁が多くの事業者に使ってもらうために多くの予算をつけたため、2018年度は多くの事業者が取得できる補助金になりました。

この補助金は、医療業の申請も想定され明記されているため、個人事業主の方も医療法人でも応募することができ、多くのクリニックや医院で利用されています。

地域創造的起業補助金

年度ごとに名前が変更されることもありますが、よく『創業補助金』と呼ばれているものです。2018年度は最大200万円の補助金で、補助率は2分の1でした。

これから創業する先生を対象にした補助金になっているため、既に開業している場合には対象になりません。これから開業する場合のみが対象になります。

クリニック・医院でも、個人事業主として開業する場合はもちろんのこと、医療法人を設立する場合も応募対象になります。
実際にクリニック・医院も採択されていますので、開業時に新しい取り組みをされたい先生はチャレンジされる価値はあるかもしれません。

他の補助金ではなかなか対象にならない、人件費や賃料も補助対象になるため、資金の使い勝手がよい補助金です。

※こちらの補助金は、令和2年度は予定されておりません。(2020年6月1日現在)

都道府県や市区町村による補助金

経済産業省や中小企業庁が募集する補助金以外にも、都道府県や市区町村で募集している補助金もあります。

特に市区町村で募集されている補助金は、一般にはあまり知られていない場合もあります。選ばれやすいものや実質的にはほぼすべての応募者に支給されているものもあるようです。

例えば、独自の創業に対する補助金があったり、ホームページ作成に補助が出たり、賃料の一部を補助してくれるような取り組みをしている都道府県や市区町村があります。

ほとんどが募集時にはホームページに掲載されます。ただ、時期が限られており、募集時期以外の期間には、ホームページを見るだけではなかなかわからないものもあります。気になる場合には、担当部署に問い合わせてみたり、専門家に聞いてみたりするのが一つの方法でしょう。

補助金を使うために注意すべきことは?

補助金は、残念ながら使いたいと思うすべての事業者がもらえるものではありません。新しい取り組みを申請した上で、採択されてはじめて使えるものになります。

もちろん、不採択ということもありますので、申請書をしっかり記述して提出することも必要です。それ以外にも要件の確認などを考えると、専門家に任せたほうがいいという場合もあるでしょう。

自分でも書くことはできるけれども、採択の確率を上げるために専門家に支援を依頼される先生もいらっしゃいます。
補助金支援の専門家は、資格としては「中小企業診断士」が多いですが、資格に関係なく支援している専門家もいます。まわりに知り合いが居ない場合には、国から「経営革新等支援機関」という認定を受けている民間コンサルティング会社や専門家を検索してみる方法もあります。

また、補助金それぞれで作られた意図も異なりますので、対象となる経費が異なります。必要な資金の用途に合った補助金なのかどうかを、まずは確認してみて下さい。

まとめ~クリニック・医院で使える補助金~

以上、クリニック・医院で使える補助金について解説しました。

今回は、以下の補助金をご紹介いたしました。

・ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金(最大1,000万円、補助率最大2/3)

・IT導入補助金(最大50万円、補助率1/2)

・地域創造的起業補助金(最大200万円、補助率1/2) ※令和2年度は予定されておりません。

これら国(経済産業省関係)以外にも、都道府県や市区町村も補助金を出している場合があります。

補助金は、新しく行う事業を申請書に記述して提出し、採択された場合に使えるものです。自身で書かれるにしても、支援を受けるにしても、今後の事業展開を考えて書くことが大事でしょう。

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プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢42人(R2年4月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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