オンライン診療では、欧米に比べると日本ではなかなか普及しないところがありましたが、その一因が診療報酬の低さにありました。

しかし、2022年の診療報酬の改定で、現行のオンライン診療料を廃止し、情報通信機器を用いた初診・再診に関わる評価を新設しました。

また、医学管理や在宅管理などに関しても評価を見直しています。

これにより、以前よりは保険診療でオンライン診療を導入しやすくなっています。

これまでオンライン診療に関する整備を躊躇していたものの、診療報酬改定後に導入を検討している先生も多いのではないでしょうか?

保険診療でオンライン診療を検討している先生に向けて、診療報酬改定のポイントを解説します。

情報通信機器を用いた初診・再診に係る評価の新設

冒頭でもお話したとおり、現在は、2022年4月以前の現行のオンライン診療料を廃止して、情報通信機器を用いた評価を新設しています。

特に初診においては、対面の診療報酬に大きく近づいたので、保険診療のオンライン診療のハードルが下がったと言えます。

しかし、算定要件があり、オンライン診療の施設基準を満たして、地方厚生局に届出をする必要があります。

以下に詳しく解説します。

基本診療料の変更内容

施設基準を満たし、届出を行った場合の情報通信機器を用いた場合のオンライン診療の初診料と、そうでない場合の初診料を以下に示します。

届出を行った場合届出を行っていない場合
初診料251点(対面の約87%)214点
再診料73点73点
外来診療料73点73点

また、後述する医学管理料についても、対面の約87%の診療報酬となっているため、かなりオンライン診療を導入しやすくなっています。

算定要件(初診の場合)

なお、上記のオンライン診療の初診の算定要件は、以下の通りです。

(1)保険医療機関において初診を行った場合に算定する。ただし、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、情報通信機器を用いた初診を行った場合には、251点を算定する。

(2)情報通信機器を用いた診療については、厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行った場合に算定する。なお、この場合において、診療内容、診療日及び診療時間等の要点を診療録に記載すること。

(3)情報通信機器を用いた診療は、原則として、保険医療機関に所属する保険医が保険医療機関内で実施すること。なお、保険医療機関外で情報通信機器を用いた診療を実施する場合であっても、当該指針に沿った適切な診療が行われるものであり、情報通信機器を用いた診療を実施した場所については、事後的に確認可能な場所であること。

(4)情報通信機器を用いた診療を行う保険医療機関について、患者の急変時等の緊急時には、原則として、当該保険医療機関が必要な対応を行うこと。ただし、夜間や休日など、当該保険医療機関がやむを得ず対応できない場合については、患者が速やかに受診できる医療機関において対面診療を行えるよう、事前に受診可能な医療機関を患者に説明した上で、以下の内容について、診療録に記載しておくこと。
ア 当該患者に「かかりつけの医師」がいる場合には、当該医師が所属する医療機関名
イ 当該患者に「かかりつけの医師」がいない場合には、対面診療により診療できない理由、適切な医療機関としての紹介先の医療機関名、紹介方法及
び患者の同意

(5)指針において、「対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められる」とされていることから、保険医療機関においては、対面診療を提供できる体制を有すること。また、「オンライン診療を行った医師自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性がある場合については、オンライン診療を行った医師がより適切な医療機関に自ら連絡して紹介することが求められる」とされていることから、患者の状況によって対応することが困難な場合には、ほかの医療機関と連携して対応できる体制を有すること。

(6)情報通信機器を用いた診療を行う際には、厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行い、当該指針において示されている一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」等を踏まえ、当該診療が指針に沿った適切な診療であったことを診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。また、処方を行う際には、当該指針に沿って処方を行い、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の関係学会が定める診療ガイドラインを踏まえ、当該処方が指針に沿った適切な処方であったことを診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

※(7)(8)については略

ここで、重要なポイントをまとめると以下のようになります。

  1. 施設基準に適合しており、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関であること
  2. 原則として、保険医療機関に所属する保険医が保険医療機関内でオンライン診療を実施すること(一部例外あり)
  3. 事前に受診可能な医療機関を患者に説明した上で、診療録にかかりつけの医師が所属する医療機関名、かかりつけの医師がいない場合には、「対面診療により診療できない理由」「適切な医療機関としての紹介先の医療機関名」「紹介方法」「患者の同意」を記載する ・対面診療を提供できる体制を有すること
  4. 患者の状況によって対応することが困難な場合には、ほかの医療機関と連携して対応できる体制を有すること
  5. 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行うこと

この点については、詳しくは以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

【関連記事】「オンライン診療の適切な実施に関する指針」2022年改訂版の重要ポイント

上記の診療報酬の改定に合わせて、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では施設基準の届出を行えば、どのような疾患でも初診からオンライン診療が可能となるように改定されています。

※従来は直近3ヶ月の間に対面診療を行った患者さんに対してのみオンライン診療料を算定可能でした。

医学管理等に係る評価の見直し(医学管理料等)

次に、医学管理料等の医学管理等に係るオンライン診療の評価の見直しについて解説します。

追加された医学管理料

オンライン診療の診療報酬の改定によって、以下の14種類の項目の医学管理料が追加されています。

これらの医学管理料について、診療報酬は対面診療の約87%となります。

・ウイルス疾患指導料
・皮膚科特定疾患指導管理料
・小児悪性腫瘍患者指導管理料
・がん性疼痛緩和指導管理料
・がん患者指導管理料
・外来緩和ケア管理料
・移植後患者指導管理料
・腎代替療法指導管理料
・乳幼児育児栄養指導料
・療養・就労両立支援指導料
・がん治療連携計画策定料2
・外来がん患者在宅連携指導料
・肝炎インターフェロン治療計画料
・薬剤総合評価調整管理料

例えば「ウイルス疾患指導料」であれば、「ウイルス疾患指導料1」の現行の対面診療が240点であることに対して、情報通信機器を用いた場合の評価は209点となります。

「ウイルス疾患指導料2」であれば、現行の対面診療における評価は330点であることに対して、情報通信機器を用いた場合の評価は287点です。

ただし、検査料等が包括されている地域包括診療料、認知症地域包括診療料及び生活習慣病管理料については評価対象から除外されています。

【以下を除いて対象を追加】

① 入院中の患者に対して実施されるもの
② 救急医療として実施されるもの
③ 検査等を実施しなければ医学管理として成立しないもの
④ 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」において、実施不可とされているもの
⑤ 精神医療に関するもの

現行の情報通信機器を用いた場合の診療の評価の見直し

以下の医学管理料については、以前から情報通信機器を用いた場合の点数が設定されていましたが、今回の改定で評価の見直しがありました。

こちらもオンライン診療の診療報酬は、対面診療の約87%となります。

現行の対面診療における評価情報通信機器を用いた場合の評価
特定疾患療養管理料
1 診療所225点196点
2 許可病床数が100床未満の病院147点128点
3 許可病床数が100床以上200床未満の病院87点76点
小児科療養指導料270点235点
てんかん指導料250点218点
難病外来指導管理料270点235点
糖尿病透析予防指導管理料350点305点
在宅自己注射指導管理料
1 複雑な場合1230点1070点
2 1以外で月27回以下の場合650点566点
3 1以外で月28回以上の場合750点653点

※厚生労働省保険局医療課「令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項Ⅱ(情報通信機器を用いた診療)」をもとに作成

在宅管理に関わる評価の見直し

在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料について、訪問による対面診療と情報通信機器を用いた診療を組み合わせて実施した場合の評価を新設しています。

同時に、一律月1回以上の訪問診療を行っている場合に算定した従来のオンライン在宅管理料を廃止しています。

例えば、機能強化型在支診・在支病(病床あり)の場合は、以下のように算定され、診療報酬が見直されています。

【在宅時医学総合管理料】

1人2~9人10人~
月2回以上訪問(重症患者)5400点4500点2880点
月2回以上訪問4500点2400点1200点
(うち1回は情報通信機器を用いた診療)3029点1685点880点
月1回訪問2760点1500点780点
(うち2月目は情報通信機器を用いた診療)1515点843点440点

 

【施設入居時等医学総合管理料】

1人2~9人10人~
月2回以上訪問(重症患者)3900点3240点2880点
月2回以上訪問3200点1700点1200点
(うち1回は情報通信機器を用いた診療)2249点1265点880点
月1回訪問1980点1080点780点
(うち2月目は情報通信機器を用いた診療)1125点633点440点

※厚生労働省保険局医療課「令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項Ⅱ(情報通信機器を用いた診療)」をもとに作成

同様に、「機能強化型在支診・在支病(病床なし)」「在支診・在支病」「その他」についても評価が見直されていますので確認してください。

また、以前は対面診療の期間を3ヶ月としていた要件を廃止し、さらに複数の医師がチームで診療を行う場合の要件を見直しています。

その他の見直し

その他、以下の点において、診療報酬の評価の見直しが行われています。

・「30分程度で通院・訪問できる距離」という上限の撤廃
・医療従事者等により実施されるカンファレンス等について、ビデオ通話が可能な機器を用いて実施する場合の入退院支援加算等の要件を緩和

後者については、従来はICT活用に制限していましたが、改定後において、「リアルタイムの画像を介したコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な機器を用いて実施しても差し支えない」としています。

【まとめ】オンライン診療の施設基準を満たして届出をする

以上、オンライン診療報酬2022年(令和4年)の改定のポイントを解説しました。

本記事のなかで出てきた「施設基準を満たして地方厚生局に届出をする」というのは、届出としなければオンライン診療ができないというものではありません。

しかし、施設基準の届出をすることで、初診料が214点→251点となります。

従来であれば、施設基準を満たすために院内環境を整備するメリットは低かったですが、施設基準を満たすことで売上増などメリットが高くなりました。

また、厚生労働省は施設基準の届出をしなくても、施設基準に準じた体制の整備に最大限努めることを要請しています。

そのため、保険診療でオンライン診療を継続的に行う医院・クリニックは、環境を整備して届出をした方がいいでしょう。

医院・クリニックの治療方針に照らし合わせて検討してください。

オンライン診療については、今後も国の方針も含めて注目され、また何か改定があるかもしれません。

オンライン診療全般のメリット・デメリットや、導入までの検討事項については、以下の記事もご覧ください。

【関連記事】オンライン診療のメリット・デメリットと導入までの検討事項

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プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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