はじめに

昔から「医師の子供は医師になる確率が高い」と言われています。実際に医師を親に持つ医学部生は30%と言われています。学費が高額の私立の医学部となれば50%程度というデータもあります。

子供にとって一番身近で影響を与える親が医師であれば、医療に興味を持つのは自然でしょう。

しかし、当然医師の子供全員が医師になるわけではありません。医師になるためには医学部を卒業するのは必須ですし、学費も他の学部より高額です。

何より、親が医師だからといって、子供が医師に向いているとは限りません。医師にならず、他の職業に就くのもまた自然なことです。

この記事では、医師の子供が医師になる場合、ならない場合に分けて最近の医学部の事情や承継問題についてお伝えしたいと思います。

子供に医師を勧めない開業医も多い

開業医の先生のなかには、「ぜひ自分の子供も医師になって、クリニックを承継してほしい」と考えている方も多いでしょう。

実際に2代、3代と続く医科歯科クリニックも少なくありません。親戚の大半が医師という家系もあります。

特に開業医の先生はクリニックの相続・承継問題もありますから、子供が医師になるかどうかは関心が高いのではないかと思います。

ただ、一方で「子供に医師は勧めない」という開業医の先生も少なくありません。

2017年のm3.comの意識調査などを見ると、子供に医師になってほしい開業医の先生は約6割、そうでない先生は約4割という結果が出ています。

「医師の子供も医師になる」イメージの割には、案外子供に医師を勧めない開業医の先生は多い印象です。

これは「自分の人生くらいは好きに選んでほしい」という思いもあるでしょう。しかし何よりも開業医の先生が医師という仕事をどう捉えているかで意見が分かれるようです。

「責任はあるけど、やはり医師はやりがいのある仕事だ」と思えば、子供にもクリニックを継いでほしいと思えるでしょう。

しかし、体力や精神力を要し責任を伴う仕事です。振り返ってみて「大変な仕事だ」という思いが強ければ、複雑な思いを抱くのも無理はありません。

しかも医師になるには、偏差値の高い医学部に合格することが必須です。そう考えれば、子供に医師は勧めないという開業医の先生が多いのも無理はないでしょう。

子供にとって医師は人気の職業

子供が将来なりたい職業をランキングにすると、ここ数年はユーチューバーが上位になっていることで有名です。

しかし、一方で子供にとっては医師も手堅い人気であることがわかります。

(1)第一生命「大人になったらなりたいものベスト10」(2018年)
⇒医師は小学生男子7位、小学生女子5位

(2)日本FP協会「小学生の将来なりたい職業ランキング」(2018年)
⇒医師は小学生男子3位、小学生女子3位

(3)ソニー生命「中学生の将来なりたい職業ランキング」(2018年)
⇒医師は中学生男子9位、中学生女子3位

このように、小中学生の間では医師は比較的憧れの職業と言えるでしょう。

これは昔から医療を題材としたドラマやマンガが人気であることも影響していると思われます。

また医療ドラマでなくても、テレビドラマは全般的に医療現場のシーンが出てくることが多いものです。

子供の頃にテレビドラマの医療現場のシーンを見て、なんとなく医師に憧れを抱いた方も少なくないのではないでしょうか?

しかも開業医の子供であれば、親が医師であることで、医療がより身近になっています。

医療ドラマは医師から見たら現実離れしたシーンが多いと言われていますが、親が開業医ということならば、よりリアルな医療の話が聞けるのです。

こういったことを考えれば、親の承継の意思に関わらず、「医師になりたい」と考える子供が多くなるのは自然と言えます。

子供が医師にならない場合

子供が医師になるか医師以外の職業に就くのかは、大学受験のときに一度決断する必要があります。

高校3年、もしくは浪人中に少なくとも一度は「医師」「医師以外」の2択を迫られることになります。

「少なくとも一度は」と言ったのは、医学部は他の学部と比較して社会人になってから入学する人の割合が多いからです。

とは言っても他の職業と比べれば、早い時期に「医師」「医師以外」の選択を迫られると言えます。

ここでは、子供が医師にならない場合の話をしていきたいと思います。

子供が医師にならなかった場合の職業

それでは医師の子供が医師にならなかった場合、どのような職業に就くのでしょうか?

残念ながら、医師以外の選択をした子供の進路は多種多様であり、傾向はつかむことはできません。

就職している人もいれば、経営者になっている人もいます。成功している人もいれば、ニートになっている人もいます。幸せになっている人もいれば不幸になっている人もいます。

そのあたりは他のサラリーマン家庭とはあまり変わらないような印象です。

ただ、大きな違いとしては、医師になる割合が比較的高いということくらいかと思われます。

子供が医師になって、いずれクリニックを承継してほしいと考えている先生も多いと思います。

しかし、職業選択の幅が昔より格段と広くなっている現代では、やはり「子供の人生は自分で決めるべき」と考えるのが妥当ではないでしょうか?

ただ、なかには医学部受験に失敗して、いったんは医師への道を諦めた子供も多いでしょう。

今では国立の医学部だけではなく、私立の医学部も学費の値下げなどによって難易度が高騰しています。

医師不足が叫ばれて長いですが、依然として医学部は狭き門なのです。

社会人になってから医学部に学士編入する人も

一度医学部受験を諦めて他の学部に入学した場合でも、医師の道を諦めきれない人もいます。

また、いったんは「医師にならない」と選択しても、何かのきっかけで「医師になりたい」と考える人がいます。

医学部は、他の学部と比べて社会人から学士編入した人や、一度大学を退学してから再入学する人の割合が多い学部です。

実際にこのような形で医師を志した先生も多いのではないでしょうか?

医学部の学士編入学とは、大学卒業者を対象に、2年次~3年次から編入学する制度で、28校の国立大学で実施されています。

大学受験の試験科目との違いとしては、生命科学や物理化学などが主要科目となり、大学1~2年程度の知識も求められます。

大学卒業者は1年次から入学する再受験も可能なので、再受験と編入学試験の併願も可能です。

開業医の子供であろうがなかろうが、再受験や編入学試験に挑戦するということは、かなり意思は固いのではないかと思います。

もし、先生の子供が大学途中もしくは社会人になってから「医師になりたい」と言うのであれば、親として、開業医としてじっくり相談してみると良いでしょう。

子供が継がなかった場合のクリニックの後継者問題

もし子供が誰も医師にならなかった場合、課題となるのがクリニックの後継者問題です。

その場合、選択肢として考えられるのは、次の3パターンです。

  1. 一緒にクリニックで働く医師への承継
  2. 第三者への承継(M&A)
  3. 廃業、解散

後継者がいなければ、廃院・解散と考えている開業医の先生も多いですが、できればM&Aも視野に入れておきたいところです。

これは廃院・解散よりもM&Aの方が、メリットが大きいことの方が多いからです。

詳しくは、次の記事をご覧ください。

【関連記事】医院・クリニックの後継者不在なら廃院か?M&Aか?

子供が医師になる場合

次に、子供が医師を志すことになった場合のお話です。

医師を志すということは難関の医学部に入学するわけで、医学部入学までの養育費、医学部の学費を考える必要があります。

医学部入学までのお金の話については、次の記事で詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

【関連記事】開業医の子供も医師に?医学部に入れたいなら知っておくべきお金のこと

医学部の難易度は上昇傾向

明るいニュースではないのですが、医学部の難易度は以前よりも上昇しています。

もともと国立大学は地方の国立大も含めて難易度が高いのですが、最近は私立大学の医学部も難易度が上がっています。

理由は学費の値下げです。私大で一番学費の安い国際医療福祉大学は2017年に医学部が開設したばかりにも関わらず、偏差値は70前後とかなり高め。

その他、学費を下げた私大の医学部は軒並み偏差値が上がっています。

学費が高い私大は反比例するように偏差値は低下する傾向にあります。しかし、それでも早慶上智の文系学部や理工学部に合格する学力は最低限求められます。

あと、医学部の難易度を物語るのが、現役合格率です。国立大学では40~50%、浪人生が併願で挑戦する私立大学では15~30%程度で、他の学部よりはかなり現役合格率が低いです。

得意科目に絞った受験ができる大学もある

難関であることには変わりないのですが、自分の得意科目を活かして合格を狙える大学もあります。

例えば帝京大学医学部は英語を必須として、その他国語、数学、物理、化学、生物から2科目選択です。

つまり、「国語、数学、英語」「国語、生物、英語」といった文系学部の試験科目に近い組み合わせが可能です。

国語が得意な方や数学が苦手な方は挑戦してみても良いかもしれません。

また、国立大学の医学部でも2次試験で数学や理科がない大学もありますから、戦略次第で合格を狙うことができます。(ただし後期日程の場合が多いです)

※受験科目については変更になる可能性があるので、希望の大学については個別で調べるようにしましょう。

日本の大学で医学部を卒業しなくても医師になる選択肢がある

聞くと驚くかもしれませんが、医学部を卒業しなくても医師になる選択肢があります。

しかし、これは正確には「日本の医学部を卒業しなくても」ということです。つまり、海外の医学部に入学するということです。

海外の医学部を卒業し、日本の医師国家試験に合格すれば日本で医師になることができます。

例えば東ヨーロッパの医学部は、日本の過熱した医学部入試と違ってかなり易しいとされています。偏差値で言えば、50以上あれば何とか合格できると言われています。

それでいて研究レベルも高く、共通言語は英語になっているので、英語が得意で海外に抵抗がないなら挑戦してみると良いでしょう。

入学後の勉強は大変かもしれませんが、海外で活躍できる医師になることも期待できます。

クリニックの家族経営について

クリニックは家族経営(同族経営)しているところがかなり多いです。実際に医療法人の社員や理事については、配偶者や子供が就任する場合がほとんどです。

将来的に自分のクリニックを承継したいと考えているのであれば、早めに自分のクリニックで働いてもらうのも良いでしょう。

家族経営については、次の記事で詳しく書いていますので、併せてご覧ください。

【関連記事】医療法人が家族経営する場合のメリットとデメリット

まとめ:子供の人生は子供が選択する

以上、開業医の先生の子供が医師になる場合と、ならない場合についてお伝えしました。

近年の医学部受験はますます過熱しており、かなり私大も含め難易度が上がっています。

ですから、もしお子さんも医師になってほしいと考えるのであれば、早い段階で受験について考えておいた方が良いでしょう。

どの大学も早慶上智の文系学部や理工学部より難しく、なかには東大や京大の他の学部より難しい医学部もあります。

しかし、基本は「子供の人生は子供が選択する」ということ。

お子さんが将来どのような進路を希望しているのか医療の現場を見せながらじっくり話し合い、相談すると良いでしょう。

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