はじめに


私達が生活する日本では毎年のように自然災害が発生しています。

その自然災害も、観測史上最大などの言葉が頻繁に使われるようになりました。

私達が経験したことがない台風や豪雨などが増え、自然災害による被害が年々増加しています。

また日本で生活する以上、避けて通れないのは「地震」への備えです。

東日本大震災を始め、熊本地震・北海道胆地振東部地震など全国で大規模な地震が発生しています。

このような自然災害発生時の損害に備える保険が火災保険や地震保険です。

個人で備えるだけではなく、医院を経営している経営者は医院経営のリスク対策としても備える必要があります。

今回は、火災保険・地震保険の知っておきたい基礎知識と選び方について解説します。

そもそも損害保険(火災保険・地震保険)とはどのような保険か?

個人で住宅を購入したり医院を開業する際、当たり前のように加入する「火災保険」「地震保険」ですが、そもそも損害保険がどのような保険なのか解説していきます。

損害保険とは?

火災保険・地震保険は損害保険の一種で、損害保険は下記のように定義されています。

「損害保険は、一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補すること」

偶然の事故とは下記のような3要件を意味します。

損害保険が支払われる基本3要件は 突発(急激)・偶然・外来 です。

損害保険で補償される損害は、上記3要件を満たす必要があり経年劣化等による損害は対象にはなりませんので注意しましょう。

実際の損害額を補償する「実損補償」という考え方

損害保険の補償は「実損に対する補償」になります。

生命保険などの場合、死亡保障3000万で被保険者が死亡すると3000万給付されます。

しかし、3000万の火災保険に加入していても実際の損害が500万の場合、保険会社より給付される金額は、実際損害を受けた500万となります。

全損(全焼した場合)した場合は、設定金額全額が補償されます。

保険会社の重複加入に注意

生命保険の場合、複数社に加入しても各保険会社より給付を受けることができます。

一方で、損害保険の場合「実損補償」が基本となりますので、複数社加入しても各保険会社から給付はされません。

損害保険は実損に対してのみ補償されますので、重複加入しないように注意しましょう。

火災以外も補償される火災保険の基本補償内容について

文字だけを読むと「火災保険=火災のみの補償」に見えます。

しかし、実際の火災保険は複数の補償がパックになっています。

実は火災保険の対象だったのに申請をしていなかった。

ということがないように、火災保険の補償内容について解説します。

火災保険の基本構成

火災保険は下記のような構成になっています。
①火災保険(風災・雹災・雪災・水災・費用補償等)
②家財保険
③地震保険
④各種特約
⑤無償サービス※保険会社によって

①の火災保険に②~④を任意で付加できるようになっています。

①の火災保険も複数の補償から構成されており、必要な補償を選択することができますのでご自身にあった補償内容で契約することができます。

火災保険の基本補償内容

火災保険の基本補償内容をみていきましょう。
①火災・落雷・破裂・爆発
②風災・雹(ひょう)災・雪災
③水ぬれ・外部からの物価落下等・騒擾(そうじょう)
④盗難
⑤水災
⑥破損・汚損等

火災保険を提供している保険会社の多くが、上記のように補償がわかれており火災の補償を基本に各補償を付加するか選択できるようになっています。

各補償の中で保険料への影響が大きいのが「水災」です。

「水災」が補償される事故の例では、台風による洪水で床上浸水し壁や床、付属設備が汚れてしまった時や、豪雨により土砂崩れが発生し、家が完全に崩れてしまったなどの場合実損に対して補償されます。

ご自宅や医院が高台や高層階などにあり水災の可能性が低い場合は、付加しないという選択肢もありますので確認してみましょう。

判断が難しい場合は、市などが提供しているハザードマップを参照して確認するのもお勧めです。

家財保険の補償内容と考え方

前述した火災保険は建物を補償対象としています。

ところが、建物内にあるテレビやエアコンなどの家財を補償する場合、家財保険を付加する必要があります。

例えば台風や竜巻などの被害で家財保険を付加していない場合、建物の損害は補償されますが家財の補償は対象外になりますので注意しましょう。

家財保険の補償額は、家族構成によって下記のような評価額の目安がありますので参考にするといいでしょう。

(家財評価額の目安)



※家財評価額の目安は家財評価額によって異なります。

地震保険の補償内容と考え方

地震保険は地震が発生した際、建物や家財の損害に対して補償する保険です。

地震保険は国が補償している保険のため、どこの保険会社から加入しても保険料や補償内容に違いはありません。

地震保険の主な補償内容を解説します。

(保険の対象)
地震保険の対象は「居住用建物」および「家財」

(保険金額の設定)
地震保険の保険金額は、火災保険の設定額の30%~50%範囲で設定ができます。

例えば火災保険の設定が5000万の場合、地震保険の設定額の上限は2500万、下限は1500万となります。

ただし、建物は5000万円、家財は1000万円が限度額となります。

(保険金の支払い)
保険金の支払いは損害の程度に応じて支払われます。

建物・家財とも保険始期が2017年1月1日以降の地震保険契約の場合
全損・・・・ 保険金額の100%(ただし、時価を限度とします。)
大半損・・・ 保険金額の60%(ただし、時価の60%に相当する額を限度とします。)
小半損・・・ 保険金額の30%(ただし、時価の30%に相当する額を限度とします。)
一部損・・・ 保険金額の5%(ただし、時価の5%に相当する額を限度とします。)

(保険料の割引)
下記条件に該当する場合、保険料の割引が適用されます。
免振建築物割引
耐震等級割引
耐震診断割引
建築年割引 ※1981年6月以降に新築された建物

(地震保険の契約期間)
1年から最長5年
長期契約で締結すると割引が適用されます。

保険の対象となる建物の条件や都道府県によっても保険料が異なります。

地震保険を検討する際は条件を確認するようにしましょう。

火災保険に付加できる各種特約について

保険会社によって特約の種類が異なりますが、任意でオプション補償を付加することもできます。

代表的な特約は下記の通りです。
個人賠償責任補償特約
類焼損害補償特約
借家人賠償特約
居住用建物電気的・機械的事故特約 等

この中でも「個人賠償責任特約」は、住宅の所有、使用または管理における偶然な事故だけではなく、日常生活における偶然の事故や、他人にケガをさせたり、他人のものに損害を与えることへの損害も補償対象となりますので、付加しておきたい特約の一つです。

無償サービス※保険会社によって

保険会社によっては、火災保険を契約すると下記のようなサービスが自動付帯されます。該当する事由が発生した場合は上手に活用しましょう。

(無償サービス例)
水回りトラブルの専門業者を手配し応急修理を行う水回りクイックサービス
玄関のドアトラブルの専門業者を手配し開錠する玄関ドアカギ開けサービス

このように火災保険には火災以外の多くの損害に対するリスクに備えることができます。

ご自宅や医院の環境を考慮の上、最適な補償を選択するようにしましょう。

自宅や医院を火災や自然災害のリスクから守る火災保険・地震保険の選び方

実際契約している火災保険の内容を確認すると、不要な補償が多く付加されていたり、過大補償のケースが多く見受けられます。

いざという時にご自宅や医院がしっかり補償される火災保険・地震保険の選び方を解説します。

【火災保険・地震保険選びの6つのポイント】

火災保険の補償内容の選び方について6つのポイントに分けて解説します。
①保険の対象を決める
②建物の構造級別を確認して適合する条件を確認
③補償の範囲を決める
④建物・家財の評価額を決める
⑤保険期間を決める
⑥地震保険・各特約を付加するか決める

①保険の対象を決める

前述してきた通り、火災保険には「建物」と「家財」に分けて補償に加入することができます。

「建物だけ」「家財だけ」「建物+家財両方」のパターンより選択することが可能です。

②建物の構造級別を確認して適合する条件を確認

火災保険は建物を構造級別に定めており、構造によって保険料が大きく異なります。

燃えやすい構造の建物は、燃えにくい構造の建物より保険料が高くなります。

火災保険を選ぶ際は、保険の対象となる建物の構造級別を確認するようにしましょう。

(建物の構造級別例)
・M構造:コンクリート造・鉄筋コンクリート造・耐火建築物(耐火基準)
・T構造:木造で耐火建築物・省令準耐火建物
・H構造:木造(耐火基準無し)

③補償の範囲を決める

前述した火災保険の補償内容を選択します。

地震による損害は地震保険を付加しないと補償されませんので注意しましょう。

火災・落雷・破裂・爆発
風災・雹(ひょう)災・雪災
水ぬれ・外部からの物価落下等・騒擾(そうじょう)
盗難
水災
破損・汚損等

④建物・家財の評価額を決める

火災保険・家財保険の補償額を設定する必要があります。

建物の住所・㎡数(建物広さ)を入力すると、各保険会社によって評価額が表示され、評価額範囲内で補償額を設定することが可能です。

マンションなどは共有部分がありますので、仮に5000万で購入した場合でも評価額が1500万などのケースもあります。

このようなケースでは、保険会社に申請を行うことで評価額の上限をあげることが可能なケースもありますので相談してみましょう。

⑤保険期間を決める

加入する火災保険の保険期間を1年から最長10年まで一括で加入することができます。

長期契約を結ぶことで、保険料を割安で締結することが可能です。

(試算例:東京都内 新築戸建て T構造 評価額2500万 補償フルパッケージ)
1年契約10年一括契約
1年間の保険料22,350円
10年間の保険料223,500円 188,230円

※ネット系損保試算結果より
※地震保険料含まず

仮に長期契約を締結し5年後に見直しを行い解約した場合、残存期間の保険料は戻ってきます。

火災保険料は年々値上がり傾向ですので、支払いに余裕がある場合は長期契約を検討されることを推奨いたします。

長期契約後に保険料が値上がりしても、値上がり前の保険料で満期まで補償を継続することが可能です。

⑥地震保険・各特約を付加するか決める

地震保険は任意で付加する・しないを選択することが可能で、「建物」「家財」それぞれに付加することができます。
・火災保険+建物のみ地震保険付加
・火災保険+家財のみ地震保険付加
・火災保険+建物・家財両方に地震保険付加

火災保険同様、長期契約が可能で1年から最長5年まで一括契約することができます。

最後に各特約を付加するか検討しましょう。

まとめ

ここまで火災保険・地震保険の補償内容や選び方について解説してきましたが、今まで経験したことがない台風や豪雨の増加、今後想定される首都圏直下型地震・南海トラフ地震などの影響を受け火災保険・地震保険の保険料が年々値上がりしています。

過度に加入する必要はありませんが、火災保険・地震保険の補償内容や仕組みを理解し自宅や医院運営のリスク対策として上手に活用するといいでしょう。

ご相談・お問い合わせ

お問い合わせはこちらから

この記事の執筆・監修はこの人!
プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢42人(R2年4月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

こちらの記事を読んだあなたへのオススメ