はじめに

都市部に関わらず地方においても人材の確保が難しくなっている昨今、医院やクリニックではパートやアルバイトでなく正社員としての雇用が増えたように感じます。

ただし、将来的なことを考えると、中小企業においてそう簡単に雇用者の人数を増やすわけにはいきません。

それではと、せめて金銭的な条件を引き上げて人材の確保をしてはということになるのですが、やりすぎてしまうと返って資産の確保が難しくなるのも事実です。

そこでこの度お伝えしたいのが、従業員ではなく業務委託として契約することにより、金銭的な条件を大幅に引き上げるという人材確保の手法。

業務委託であれば、事業主としては社会保険料等の負担が発生することはありませんし、消費税の課税仕入れとして計上することができます。

従業員としての負担を考えると、業務委託扱いをした方が単純に約2割程度は金銭的な条件を引き上げることができるのです。

ただし、単純に業務委託とすれば良いのかというと十分な注意が必要であり、雇用と業務委託の違いをきちんと把握しておく必要があります。

それでは、雇用契約と業務委託契約の違いを確認しておきましょう。

雇用契約は、勤務地を指定され、その場所で勤務した時間に対して対価が支払われるのに対して、業務委託契約は委託した業務の成果によって対価が支払われる契約となります。

そのため、雇用契約では、被雇用者は勤務先の管理者の指揮命令下に置かれますが、業務委託契約では、業務受託者は業務委託者の管理下に置くことができません。

もし業務受託者を委託者の管理下に置いた場合、いくら形式的には業務委託と称していても、税務的にも労務的にも否認されるケースがあります。

この事例以外にも細かい注意点はあるものの、きちんと条件をクリアできれば、雇用による人材確保より、業務委託の方が事業主側として有利な場合が多々あるのです。

そこで今回は税金負担を減らすことができる医院・クリニックの従業員の雇用方法についてお伝えいたします。

給与と業務委託の違い

法人として支払う税金の中では法人税を思い浮かべる先生が多いかと思いますが、自由診療が多いクリニックではもうひとつ消費税という比較的大きな金額の税金もあります。

法人税は経費などの操作により節税しやすいのですが、売上高により変動する消費税についてはなかなか節税が難しいと考えている先生方が多いかと思います。

しかし、業務委託による外注費を活用することで消費税を減らすことができるのをご存知でしょうか?

スタッフに従業員として働いてもらうのではなく、業務委託契約や請負契約などで、外注費(業務委託費)とすることで経費として消費税を節税できるのです。

本項では外注費扱いとすることで可能な消費税の節税法をお伝えいたします。

給与所得では節税できない

医院の業務をこなす際、一般的には従業員を雇用し、正社員やパート、アルバイトとして雇い入れることが多いかと思います。

その場合、医院に関わる事業を手伝う報酬として給料支給が発生し、このとき、医院として商品・サービスを販売すると、お客様から消費税を受け取ることになります。

受け取った消費税は後で税金として納めますが、あなたの医院が商品を購入したり、サービスを受け取ったりするとその代金も「消費税課税取引」として消費税の納税義務が発生します。

このままでは消費税を二重課税することになるため、売上全体のうち、経費として支払ったお金に関しては差し引くことができます。

ただ、従業員への給料に関しては消費税が含まれていないので、同じ人件費であっても給与所得での支払いについては、消費税の金額を減らすことはできません。

つまり、スタッフの給料をいくら支払ったところで消費税を減らすことはできないのです。

業務委託では節税できる

ただ、同じ支払いであっても業務委託費用(外注費、労務外注費)であれば、支払ったお金の分だけ消費税を減額させることが可能です。

医院・クリニックを運営していたとするとメインビジネスは歯科医や内科医など医療サービスとなります。

そこでたとえば、医院のホームページを作ろうとした場合、専門知識を持った社員は通常、医院・クリニックにいないため、外注することになるかと思います。

そうなると、ホームページ作成に関する外注費用は当然ながら消費税を含まれた金額を支払う必要があるのです。

このように外注費として支払った金額については、その分だけ消費税を減額しても問題ないということになります。

これは、あなたの社内に常駐して仕事をしてもらう場合も同様です。

最も分かりやすいのは人材派遣の活用であり、派遣会社に依頼して人材を派遣してもらった場合の報酬に関しては消費税分を上乗せして払わなければいけません。

派遣料に消費税が含まれている以上、派遣社員に仕事の外注を依頼したときは支払った分の消費税を減らすことができるのです。

給与認定されないための注意点

それでは、これまで支払っていた給料を何でもいいので外注費として計上すれば消費税を抑えられるのかというと、そういうわけではありません。

給料を業務委託費用にすることで消費税を抑える方法はよく知られているため、税務署はそうしたやり方が存在することを広く知っているのです。

そのため、たとえ業務委託契約書等を結んでいたとしても、「従業員と同じ働き方をした」と捉えられた場合、給与所得と認定されて未納分の消費税支払いを命じられることもあります。

何の考えもなしに、外注費で計上し、社内外注した場合でも、給与所得と捉えられる恐れがあるのです。

そのためには、税務調査等で外注費用が給与所得として認定されないように準備をする必要があります。

そこで、本項では業務委託などの外注費を給与として認定されない要件について、お伝えいたします。

場所や時間で拘束をしない

実際に業務を依頼する場合には特定の場所を指定して仕事をしてもらう必要がありますが、場所の拘束がないとおおよそ外注費として計上できるのです。

院内で働くスタッフは場所がなければ、仕事にならないのであまり現実的ではありません。

ただし、そんな場所の拘束以外の基準として時間の拘束があります。

従業員であれば、出勤時間や終業時間が決まっているため時間的な拘束があります。一方で外注である場合には、作業時間は指定されなく、成果報酬での支払いです。

時給による計算や、成果ないにも関わらず給料が支給されることはなく、外注であれば成果に対して報酬を支払わなければいけません。

たとえば、歯科技工士を雇っている歯科医院が業務を委託する場合、「義歯や補綴物が完成していなくても毎月給料を支払っている」状態ならば給与所得として扱われるでしょう。

しかし、「義歯や補綴物が完成したときに報酬を支払う」という契約になっているならば、外注費として認められると思います。

また、通常の医院においても、何人の患者を相手にしても同じ金額を支払っているのであれば給与所得ですが「患者の人数に応じて報酬を支払う」という場合は外注費として認められることがあります。

交通費を支給しない

もしも、医院側が外注先に対して交通費を支払っていた場合、従業員と認定されて給与所得になる可能性は高くなります。

なぜなら、従業員であれば通勤費手当などの交通費が支給されますが、外注である場合にはそういった手当が発生しないのが当然であるためです。

ただし、どうしても交通費が発生する業務であるならば、外注費用に込みで金額設定をすることで業務委託費用として認めてもらうことができます。

一部を外注費とすることで節税する

外注費として認められるためには、これまで述べたことを理解する必要があり、正しいやり方で実施することが重要です。

現在行っている業務に関して、もし従業員でなく、業務委託を変えることができるのであれば一度考えてみてはいかがでしょう。

<業務委託への置き換え例>
・営業などのメイン事業でない部分は代行会社に依頼する
・簡単な事務作業に関しては派遣業務とする
・勤務時間を自由にする代わりに成果報酬形態にする

このように勤務形態を変更することで、給料ではなく外注費として経費計上することも可能になるでしょう。

もちろん既存の従業員を雇用契約から請負契約にするには、従業員への説明と理解を求めることが必要になります。

すべての従業員を外注化することは現実的ではありません。しかし、一部の従業員については検討してみてもよいのではないでしょうか。

東京都のあるクリニックでは、2人ほど従業員を外注化することで、消費税だけでなく、社会保険料なども含めて、年間約100万円以上の支出を抑えることができました。

ご興味ある先生は取り組んでみてはいかがでしょう。

まとめ

今回は、人件費を業務委託として外注化することによって、消費税や社会保険料を抑える方法についてお伝えしました。

  1. 給与と業務委託の違い
  2. 給与認定されないための注意点
  3. 従業員の一部を外注化して節税する

医院・クリニックを経営する上で必ず発生する税金の中でも負担が大きな消費税ではありますが、現在の環境を見直すことで対策することが可能となる場合もあります。

ぜひ、今回お話したことを取り入れて、医院経営における税金対策を実現できればと思います。

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