はじめに

医学部の大学受験で、女性よりも男性を優遇していた問題が記憶に新しいですが、女性医師の割合は増えてきています。

1980年代の女性医師の割合は10%程度でしたが、厚生労働省の調査では、2016年には21.1%まで増加。

医師の国家試験の合格者数でも、ここ20年は女子の合格率が30~35%を推移しており、今後も女性医師の割合は増えていくことが考えられます。

しかしOECD加盟国で比較すると、女性医師の割合については日本が最下位です。(OECD加盟国の加重平均が39.3%、日本は21.1%)

世界的に見れば、日本の女性医師の割合はまだまだ少なく、後進国といって良いのです。

そして、日本ではまだたしかに女性医師は出産・子育てと忙しい仕事との両立が難しいのが実態です。

年齢別の女性医師の割合

日本の女性医師の割合が、OECD加盟国で最下位となっている背景は、年齢別に女性医師の割合を調べていくと想像が付きます。

2014年の厚生労働省のデータでは、29歳以下の医師で女性医師の割合は34.8%ですが、

30~39歳では31.1%
40~49歳では22.0%
50~59歳では13.9%
60~69歳では9.9%
70歳以上では9.3%

と、年齢が上がるにつれて、女性医師の割合は顕著に減っているのが現状です。

また、女性医師が仕事を中断(もしくは休職)、離職した理由を複数回答でアンケートを取ると、大半は出産(70.0%)と子育て(38.3%)となっています。

この厚生労働省のデータから考えると、まだ日本では、女性医師は出産や子育てによってキャリアが中断されていると推測されます。

いかに子育てとの両立が困難であるかを伺わせます。

子育てをしながら女性医師が病院で勤務する上で必要と考えられる対策としては、

職場の雰囲気、理解

勤務先に託児施設がある

子どもの急病等の際に休暇がとりやすい

当直や時間外勤務の免除

配偶者や家族の支援

といったものが、厚生労働省のアンケート調査では上位になっていますが、対策がなかなか追いついていないのが実態でしょう。

女性医師の結婚事情

女性医師の結婚事情については、非常に関心の高いテーマです。女性医師の未婚率や離婚率は決して低いものではありません。

2012年の総務省の統計調査では、女性医師の未婚率は32.5%です。

ちなみに、同じ調査で働く女性の未婚率は28.9%です。そう考えれば他の働く女性とは大きな差があるとは言えません。

ただ、楽観視できる数字かと言われればそんなことはなく、特に男性医師の未婚率8.9%と比較すれば、かなり大きな開きがあると言えます。

しかも、女性医師の場合、さらに顕著なのは離婚率です。日本の全体の離婚率は30%と言われますが、女性医師の離婚率は約50%程度です。

よく3人に1人が離婚する時代なんて言われていますが、女性医師に至っては2人に1人です。

医師としての仕事が忙しく、なかなか結婚できない、しても離婚する女性医師が多いというのが現実のようです。

女性医師と結婚する男性の大半は激務である

同業種の男女が結婚することは決して珍しくないのですが、医師の場合はその傾向が顕著です。

女性医師の結婚相手は、大半が男性医師です。

2007年の日経メディカル誌の調査によれば、なんと女性医師の68%は男性医師と結婚するというデータがありました。

2016年現在、「アエラムック『医学部がわかる』」の調査では42%となっていますが、それでも十分高い数字です。

ちょっと昔の話ですが、元祖タレント女医の西川史子さんが、「結婚相手は年収4000万円以上」とテレビで発言していました。

4000万円というのはかなり巨額の数字ですが、この発言には「自分より年収の下の男とは付き合いたくない」という真意があったと思います。

実態として、最低でも自分と同等の年収の男性と付き合いたい女性医師の先生は多いのではないでしょうか?

そうなれば、必然的に相手も医師か、もしくは比較的成功している実業家や経営者が対象となります。

しかし、こういった男性のほとんどは、激務と言えるほど仕事が忙しいです。

結婚・出産後、子育てと仕事を両立していきたい女性医師は多いと思いますが、それには配偶者や家族の支援が必要です。

しかし、女性医師が結婚相手に選ぶ高収入の男性は、みんな忙しいのです。

そういった背景もあり、女性医師が出産後、子育て期間中も病院等で医師を続けるというのは、かなり厳しいのではないかと思われます。

結局、休職や退職でキャリアを中断せざるを得ない。このような現状になっているようです。

余談ですが、女性医師の割合が45%と、日本の倍以上の割合になっているドイツでは、女性のほうが多い病院も珍しくありません。

また、当直や勤務時間も男性医師と女性医師でほとんど変わらないとのこと。

なぜ、このようなことが起きるかというと、単純にドイツは日本より男女の家事・子育ての分担が徹底されているのです。

また、ドイツでは男性も育児休暇を取るのは当たり前です。

その他、ドイツでは日本と比べて、子育てとの両立に対して、柔軟に対応が可能なのです。

患者最優先の思想が強い日本に対して、このシステムを完全に導入することは難しいかもしれませんが、見習うべき点は多いでしょう。

女性医師が子育てと両立するための限られた対策

繰り返しになりますが、子育てと両立しながら女性医師が病院等で仕事する上で必要と考えられる対策としては、

職場の雰囲気、理解

勤務先に託児施設がある

子どもの急病等の際に休暇がとりやすい

当直や時間外勤務の免除

配偶者や家族の支援

というのがあるという話をしました。

しかし、現状の日本の勤務医のシステムと、育児制度、さらに日本の医療業界の文化を考慮すると、いずれも厳しいのが実態です。

医師の人材不足と長時間労働が深刻化している日本で、周りの男性医師の理解を求めるのは、現実的に難しいでしょう。

しかも上記に書いたように、配偶者や家族の支援も得られる可能性も低いわけです。

もはやここまでいくと、病院勤務の女性医師ができる対策としては、整理収納や家事・育児代行サービスの利用など、家事を省力化するくらいではないでしょうか?

もちろん育児休暇を取得したり、勤務形態をパート・アルバイトにできれば良いと思います。

しかし、病院の理解を得るのは難しいでしょうし、収入は下がってしまいます。

女性医師の半数は子育てとの両立で悩むというデータもありますが、このような日本の制度や風土では、そうなってしまうのは仕方ないでしょう。

患者に求められる女性医師

しかし、実際に医療現場に目を移すと、患者は女性医師を求める傾向があります。

特に女性患者の場合は、女性医師の診察を求める傾向が強いです。

特に産婦人科や小児科では、女性特有の悩みが理解できる女性医師のほうが安心感を生みます。

また美容皮膚科や美容整形外科なんかも女性医師のほうが良いかもしれません。

実際に、このような診療科目は、比較的女性医師の割合が高いです。皮膚科なんて半数近くが女性医師です。

また、診療科目にもよりますが、男性患者でも女性医師の診察を受けたいという声も多くあります。

やはり、これも同じ理由で、男性患者にとっても、男性医師よりも女性医師は安心感があるためです。

そういう意味では、女性医師は患者からの信頼を集めやすい傾向があり、それゆえに患者に覚えてもらいやすい傾向にあります。

女性医師の開業という選択肢

女性医師の出産・子育てとの両立については、まだまだ課題はあります。

こういった時代が、今後もしばらく続くのではないかと思われます。

出産と子育てと仕事との両立を検討する場合、ひとつ選択肢として考えておきたいのがクリニック開業です。

上に書いたように、女性医師は患者からの信頼を集めやすいので、個人開業した場合にも患者さんがついてくるケースが多いでしょう。

特に、産婦人科や小児科などはその傾向は強いのではないかと思います。

クリニック開業は、様々な解決すべき課題がありますが、大きな課題のひとつが集患です。

決して大丈夫と言い切ることはできませんが、集患で有利なのは、とても大きなことです。

信頼を築いていれば、広告宣伝費もそんなにお金をかけずに済むかもしれません。

今では医院・クリニックの競争の激化しており、集患に悩む開業直後の先生は多くいらっしゃるのです。

女性医師の割合が年齢とともに減少していくことでわかるように、ライフステージが進んだ女性医師は、若い女医よりも時間的自由度が低くなります。

また、お子さんがいる女性医師の場合、自宅から勤務地の病院の距離も気になるところです。

勤務医で自宅から遠い場所で勤務していると、お子さんとの時間を思うように取れません。

そう考えると女性医師のクリニック開業というのは、ひとつの選択肢として有効かもしれません。

ただ、クリニック開業には様々な労力と手続き、そして莫大な開業資金が必要になります。

信頼できるコンサルタント探し

様々な開業手続き

物件選び

外装や内装

医療機器の購入

資金調達

人材の確保

開業直後の集患

広告宣伝

もちろん、うまくいけば勤務医時代よりも高い年収が期待できますが、最近では患者が集まらず、莫大な開業資金を回収できないケースも増えています。

そうなれば廃業、ひどい場合は自己破産に至ることもあります。

また開業医ともなれば経営者としての仕事も増えていきます。

経営者感覚がなければ、男性、女性関わらず、開業医は不向きでしょう。

また、ライフステージによっては開業するタイミングもあるでしょう。

あくまで個人開業は、ひとつの選択肢として捉えていただければと思います。

まとめ

今回は、結婚や出産・子育てと仕事の両立に悩む女医の現実について書きました。

女性医師の割合は増えてきていますが、他のOECD加盟国では最下位で、特に年配の女性医師の割合が圧倒的に少ないです。

また、多くの病院は女性医師の育児との両立に対する理解がまだ不十分で、そういう雰囲気にもなっていません。

医師の人材不足問題が解消されない限り、この風土はなかなか変わらないかもしれません。

一方で患者の立場で考えれば、女性医師は信頼しやすい、安心できるというメリットがあり、地域医療のニーズは比較的高いと思われます。

信頼されやすいというのは、患者を集めやすいということです。

患者の信頼が集まってきた。

時間的な融通を効かせたい

子どもとの時間を多く確保したい

もっと収入を上げたい

自分の理想の治療を実現したい

このようなことであれば、もちろん経営リスクは伴いますが、クリニック開業も検討して良いと思います。

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プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢42人(R2年4月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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