はじめに

医師の税法違反の行政処分はかなり重く、刑事罰に処されるほど悪質な脱税の場合は3年以内の医業停止、もしくは免許取り消しとなります。

開業医の先生の場合は経営が立ち行かなくなるくらいの処分になりますから、脱税は避けなければならない行為の1つです。

また、当然ながら税務調査などで申告漏れが指摘されれば加算税、法定納付期限に間に合わなれば延滞税が課されます。今回は申告漏れのときに発生する加算税や延滞税などについてお伝えします。

【附帯税】行政制裁として課される税とは?

日本の国税のうち、行政制裁として課される本税以外の税としては以下のようなものがあります。これらを総称して附帯税と呼びます。(国税通則法2条四)

  • 延滞税
  • 利子税
  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 不納付加算税
  • 重加算税

このように申告漏れの際に発生する課税については様々なものがあります。次に詳しく解説していきます。

ただ、利子税については罰則的な意味はなく、利息のような税金になりますが、参考までに併せて紹介します。

延滞税

延滞税は、法定納付期限までに支払われるべき税金を納付していない場合に課税されます。(国税通則法60条)

また、期限後に修正、更正または決定の処分を受けた際、納めるべき税額が不足していた場合にも延滞税が発生します。

つまり、加算税が課されると同時に延滞税も加算されることになります。ただし、後述するように一定の条件を満たせば免除されることがあります。

延滞税の税率

税率は延滞期限の翌日から2ヶ月後の間であれば「7.3%」か「特例基準割合に1%を加えた割合」のどちらか低い方。

延滞2ヶ月以降であれば年率「14.6%」か「特例基準割合に7.3%を加えた割合」のどちらか低い方になります。

特例基準割合とは、前年の銀行の新規の短期貸出約定平均金利に年1%分を加えた割合のことを言います。

2014年以降の特例基準割合は次のようになっています。

特例基準割合 特例基準割合+1%
※延滞期限2ヶ月まで
特例基準割合+7.3%
※延滞期限2ヶ月以降
2014年 年1.9% 年2.9% (<7.3%) 年9.2% (<14.6%)
2015~2016年 年1.8 年2.8% (<7.3%) 年9.1% (<14.6%)
2017年 年1.7% 年2.7% (<7.3%) 年9.0% (<14.6%)
2018~2019年 年1.6% 年2.6% (<7.3%) 年8.9% (<14.6%)

いずれの場合も7.3%(延滞2ヶ月まで)、もしくは14.6%(延滞2ヶ月以上)を下回る数字であるため、こちらの数字が適用されることになります。

延滞税の免除

一定の条件を満たせば延滞税が免除されますが、「換価の猶予」(徴収法151条)と「納税の猶予」(国税通則法46条2項)の2種類があります。

換価の猶予

「納税について誠実な意思を有する」と認められた場合、納税者に対して、財産の換価処分(公売)を猶予し、分納を承認する制度です

具体的には次のような猶予や延滞税の免除が与えられます。

  1. すでに差押えられている財産の売却を1年間猶予(徴収法151条)
  2. 事業の継続や生活に支障の出る可能性のある財産の差押えを1年間猶予(徴収法151条)
  3. 猶予した国税に係る延滞税のうち、その猶予期間に対応する部分の金額の2分の1に相当する金額を免除する(通則法第63条第1項)

納付期限から6ヶ月以内に猶予申請書を提出することが条件となっているので、忘れずに提出しましょう。

納税の猶予

納税の猶予は、次の3つの場合に適用されます。

(1)納税者が災害により、相当な損失を受けた場合(通則法第46条第1項)

(2)納税者が災害に遭ったり病気にかかったり、または事業の休廃止をした等の事実がある場合 (通則法第46条2項)

(3)一定の期間が経過した後に納付すべき税額が確定した場合において、納税者がその国税を一時に納付することができない理由がある場合(通則法第46条3項。)

この中で多いのが3つ目の場合でしょう。これは具体的に言うと、確定申告後に誤りに気づき、修正申告をしていた場合、一定期間を延滞税の滞納日数としてカウントしない特例です。

※確定申告及び税計算に係る事実の隠ぺいや仮装といった不正を行って国税を免れた等の場合を除く

法定期限内に確定申告書を提出したのちに、納付期限を1年以上経過してから修正申告または更正を行った場合は、法定期限日から1年経過する日の翌日から申告書の提出または更正通知書の発行された日までの期間が免除されます。

利子税

延滞税と少し似ているのが利子税です。(国税通則法64条)

公認会計士による監査や資金繰りなどの事情で納付期限までに税金を納付できず、税務署に申告・支払の延期の適用を受けた場合に課税されます。

例えば延納したときや物納したときが該当します。この納付遅延した分については利子税のみが課され、延滞税は課されません。

延滞税が罰則的な意味合いを持つのに対し、利子税は納付期限を延ばしたときにかかる利息のような税金です。

確定申告が不適切なときに課される税金とはかなり性質が違い、税率も延滞税より低くなっています。

また、利子税は「租税公課」で仕訳を切り経費にできるのも特徴です。

利子税には、所得税なのか贈与税なのか、相続税なのかによって様々な条件があります。例えば延納の場合は、次のような利子税が課されます。

延納には、所得税及び復興特別所得税の延納と贈与税の延納があります。

(1)所得税及び復興特別所得税の延納
3月15日(金)までに納付すべき税額の2分の1以上を納付すれば、残りの税額の納付を5月31日(金)まで延長することができます。

延納期間中は特例基準割合と同等(2019年は1.6%)の割合で利子税がかかります。

(2) 贈与税の延納
納税の期限までに金銭により一時に納付することを困難とする事由がある場合に適用されます。

期限までに申請書及び担保提供関係書類を提出するなど、一定の要件を満たすときには5年以内の年賦による延納をすることができます。

延納期間中は年6.6%、もしくは各年の延納特例基準割合が7.3%に満たない場合には「6.6%×延納特例基準割合÷7.3%」で算出される利子税を支払います。

加算税

税務調査などで申告漏れが発覚した場合にペナルティとして支払うのが加算税です(国税通則法65~68条)。加算税には、主に次の4つの種類があります。

過少申告加算税

確定申告は期限内に済ませたが、申告額が過少であるために修正申告や更正があり、新たな本税が発生した場合に課税されます。

【税率】
・追加分の10%
・上記の金額が期限内申告税額と50万円のどちらか多い方の金額を超える部分については、5%加算。

【払わなくていい場合】
・正当な理由がある場合
・一度納税額が減額され、その後増額された場合、当初の税額に達するまでの分
・更正を予知しないで行った修正申告の場合

無申告加算税

納付すべき税金があったにも関わらず、申告期限までに確定申告書を提出しなかった場合に課税されます。

【税率】
・納付すべき税金の50万円までは15%(※1)
・50万円を超える部分については20%(※1)
・税務署から指摘される前に、自主的に納付した場合は5%もしくは10%
※ただし過去5年内に、無申告加算税を課されたことがあるときは、上記に10%加重

【払わなくていい場合】
・正当な理由があった場合
・法定申告期限から1月以内にされた一定の期限後申告の場合

不納付加算税

源泉徴収した所得税を納付期限内に支払われなかった場合に課税されます。

【税率】
・納付すべき税金の10%
・税務署から指摘される前に、自主的に納付した場合には5%

【払わなくて良い場合】
・正当な理由がある場合
・法定納期限から1ヶ月以内にされた一定の期限後の納付の場合

重加算税

加算税の中で、もっとも重い課税を伴うのが重加算税です。

仮装や事実の隠ぺいにより申告した場合、つまり上記と違ってうっかりミスではなく悪意を持って行った場合に適用されます

【税率】
・過少申告加算税の代わりに追加本税の35%
・無申告加算税の代わりに納付すべき税金の40%
・不納付加算税の代わりに納付すべき税金の35%
※ただし過去5年内に、重加算税を課されたことがあるときは、上記に10%加重する

また、重加算税が課されるほど悪質ですと行政処分の対象になる可能性もあり、またクリニックの信頼も失います。

医師の脱税に関してはかなり重い処分が課されるので注意しましょう。

【まとめ】期限までに適切な確定申告を

ここまで、延滞税、利子税、加算税といった附帯税についてお伝えしました。

延滞税 法定納付期限までに支払われるべき税金を納付していない場合に課税
利子税 納付期限までに税金を納付できず、税務署に申告・支払の延期の適用を受けた場合に課税
加算税
過少申告加算税 確定申告は期限内に済ませたが、申告額が過少であるために修正申告や更正があり、新たな本税が発生した場合に課税
無申告加算税 納付すべき税金があったにも関わらず、申告期限までに確定申告書を提出しなかった場合に課税
不納付加算税 源泉徴収した所得税を納付期限内に支払われなかった場合に課税
重加算税 仮装や事実の隠ぺいにより申告した場合に課される課税(刑事責任を問われる可能性あり)

脱税となれば重加算税が課され、医師の場合は最悪医業停止や医師免許取り消しなどの重い行政処分が課されます。

また、そうでなくても申告期限に間に合わなかったり、申告漏れが指摘されれば加算税・延滞税が課されます。

このような事態に陥らないためにも、期限までに適切な確定申告を行うようにしましょう。

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