はじめに

医院を開業された先生の中には、奥様や兄弟など身内の方と一緒にお仕事をされている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

医師や看護師などのポジションでないとしても、総務など簡単な事務作業を割り振ることで、従業員として給料を支払いながら経営されている医院は多く存在します。

親族経営である場合、身内の協力の元、事業を展開・継続することは珍しくありません。

そのため、事業が軌道に乗り、収益増加を実現できると、節税の観点から家族従業員への役務提供の対価として給料を支払おうと考えるのは道理です。

そこで今回は、身内に支払う給与を専従者として経費計上するための制度や要件について、お伝えいたします。

親族に支払った給与が必要経費として認められる方法

親族に支払う給与が必要経費として認められるには、以下のように青色申告か白色申告かによって要件が異なります。

①事業を営む青色申告者で、一定の要件のもとに親族へ支払った給与を必要経費とする青色専従者給与額の必要経費算入の規定の適用を受ける方法
②事業を営む白色申告者で、事業専従者控除の適用を受ける方法

青色専従者給与として認められる要件

所得を分散することによって節税効果が見込める専従者給与は、すべての家族や従業員がなれるわけではなく、次の3つの要件に該当している人が対象となります。

  1. 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  2. その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  3. その年を通じて6ヵ月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の事業に専ら従事していること

上記の該当者は「青色事業専従者給与に関する届出書」の給与を支払う年の3月15日までに所轄税務署へ提出する必要があります。

ただし、「1月16日以降に開業」また「新たに専従者が増えた」場合には、開業した日または専従者が増えた日の2ヵ月以内に提出しなければいけません。

なお、青色専従者給与の必要経費算入が認められても、際限なく必要経費にできるわけではなく、一般的に次の3つの視点と届出書に記載した範囲によって判断されます。

  1. 専従者の労務に従事した期間、労務の性質、および程度から見て妥当かどうか?
  2. 同じような事業に従事している従業員の給与状況から見て妥当かどうか?
  3. 事業種類や事業規模などから見て妥当かどうか?

つまり、専従者に不当に高い給料を支払った場合は必要経費として認められません。

また、同業他院に勤めている医師や看護師の給与、また事業規模と比較し、高額であると認められた給与額については必要経費と認められないこともあるのです。

給与を決める際には、求人誌などから仕事内容や勤務実態が近い企業を見つけ、募集要項に記載されている初任給と比較した上で設定しましょう。

事業専従者給与として認められる要件

まず大前提として、白色申告者は専従者への給与を経費にすることはできません。

ただし、以下の要件を満たし、事業専従者控除を適用できた場合、親族への給与相当額を経費として認められるケースがあります。

〇白色申告者の営む事業に以下の要件を全て満たす事業専従者がいること(青色事業専従者とほぼ同様)
・白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
・その年を通じて6ヵ月を超える期間、その白色申告者の事業に専ら従事していること

そして、確定申告書に控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載することで、次の2つのうち低い方の金額が適用されます。
(1)事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ50万円
(2)この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額

なお、15歳以上であったとしても、学生や他に職業がある場合、事業に従事していたとしても、専従者の判定期間に含まれないこともあります。

また、青色事業専従者・事業専従者の該当者は、控除対象配偶者や扶養親族とされず、事業主の所得税計算において、人的控除が加味されないため、注意が必要です。

院長夫人に給与を払う場合の注意点

ここからは、医療法人での院長夫人に対する給与に関してお話いたします。

医院と院長先生を含めた全体での節税を考えた場合、院長夫人に給料を支払うことによって節税を実現できる可能性があります。

法人税等の税率は約20~30%であるのに対し、所得税の税率は5~45%、所得税と住民税を合計した税率は15~55%。

累進課税扱いである所得税や住民税は税率の幅が広いため、医院として支払う法人税より個人として所得税・住民税を支払った方が合計で納税額が安くなることがあります。

そのため、医院と院長先生だけでなく、院長夫人も含めることによって、効果的な節税の実現が可能ではありますが、当然ながら注意すべき点もあります。

医療法人での院長夫人の扱いは従業員か役員か?

院長夫人を従業員として雇った場合、給与は損金として計上可能です。

しかし、法人税法では、院長の親族や医院経営に影響力を持つ者であるなど、一定の要件を満たす場合には「みなし役員」とされます。

経営に口を出せる立場である院長夫人が給料を受け取っていた場合には、みなし役員として認定される可能性が高いのです。

みなし役員の給与は役員報酬と同様の制限を受けるため、毎月決まった報酬を支給する必要があり(定期同額給与)、役員賞与は、損金計上はできません。

なお、定款や株主総会の決議で決められた限度額を超えた分に関しても損金にできません。

更に、院長夫人の業務内容・医院の収益状況・同業同規模水準と比較し、妥当な報酬金額を超えると、その部分は「過大役員報酬」とみなされます。

過大役員報酬とみなされた場合には、損金として算入できないなど、法人税法の制約が生じてしまうのです。

そのため、医院夫人は最初から役員扱いとし、業務分担し、株主総会で報酬額をきちんと決議しておくことをオススメします。

こうすることで、結果的に従業員としての給与より高額であっても、損金計上でき、税金上の制約を受けずに済む可能性が高いのです。

まとめ

今回は、院長夫人や家族への給与に関する注意点についてお伝えしました。

  1. 親族への給与が経費として認められる方法
  2. 院長夫人に給与を支払う場合の注意点

個人で医院経営をされている場合、多くの先生は奥様や兄弟など身内に対して、事務などのお手伝いを依頼されていることがあります。

そして、身内を専従者とみなし、仕事内容に見合った給与を支払うことで節税することも可能となります。

ぜひ、今回お話したことを1つでも取り入れて、医院経営における節税を実現できればと思います。

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