取引先との接待や同業者との情報交換のための懇親、更には従業員の福利厚生としても人気のゴルフ。

開業医の先生であれば、製薬会社や医療機器メーカーがゴルフ接待を行っているのを見たことがある方もいるでしょう。

ひと昔前まではMRと呼ばれる医薬情報担当者が中心となり、医院の先生を誘ったゴルフ接待が頻繁に行われていました。

そういった時代が過去にあったため、開業される前の研修医時代にゴルフを始められた先生も少なくありません。

特に大学病院出身の先生は学校関連での結びつきが強いため、大学内や他院との情報交換等の場として、ゴルフが活用されているのが現状です。

そのため、開業医の先生から「このゴルフ代は経費計上できるのか?」という相談をいただくことがあります。

そこで、今回は、開業医の先生がゴルフ代(プレー代や会員権など)を経費処理する際の注意点をお伝えします。

税務調査官が目を光らせるゴルフのプレー代の2つの重要ポイント

開業医のゴルフ代イメージ

ゴルフのプレー代に限らず、交際費で計上した経費は、税務調査ではチェックされやすい項目の1つです。もちろん経費として認められなければ、追徴課税を支払うことになります。

とある開業医のA先生の例をご紹介しましょう。

A先生は税務調査の際に、「このゴルフ代は誰と行ったのか?」と聞かれた際、「医師同士で行って情報交換した」「患者さんを紹介してもらった」と言っていました。

しかしゴルフ場に照会してみたところ、一緒にゴルフをしていたのは医師ではなく、ゴルフのインストラクターだったことが発覚します。

つまり「実はこのゴルフ代はレッスン料として支払ったもの」とわかり、架空経費として指摘され、追徴課税が課されてしまいました。

このように、本来交際費として認められないプレー代まで経費計上し、税務調査で指摘されることは昔からあるケースです。

そこで、まずはゴルフのプレー代の経費処理で、開業医の先生が知っておくべき重要ポイントをお伝えします。

開業医の先生が誰かを接待する機会は多くない

「開業医の先生は、ゴルフや飲食などで誰かを接待する機会が多い」というイメージを抱いている税務調査官は、ほとんどいないでしょう。

開業医の先生の場合、接待される機会はあるにしても、自分が接待して他人のプレー代まで支払うことは少ないでしょう。

ほとんどが冒頭でお伝えしたように、医師同士の情報交換や交流の場として活用している場合です。

このような場では、自分のプレー代は当然自分で支払うにしても、他の医師のプレー代まで支払うとは考えにくいでしょう。

そのため、複数人のゴルフのプレー代を経費処理した場合は、税務調査官はまず疑って確認してくると思って良いでしょう。

交際費全般で言えることですが、領収書は必ず、用途と誰とのプレー代なのかがわかるように保存しましょう。

なお、ゴルフのプレー代だけでなく、ゴルフ場までの交通費や懇親会費についても、交際費として計上が可能なので、忘れずに経費計上しましょう。

照会すれば誰とゴルフしたかはすぐわかる

先生が誰とゴルフをしたか、実は税務調査官はすぐに調べることができます。

近年ゴルフ場ではメンバー表が電算化されており、税務調査官は、プレーをした日時や氏名を即座に把握することが可能です。

そのため、仕事に関係のないゴルフ仲間と楽しんでいるだけだったり、A先生のように私的なレッスン料を経費処理したりといった誤魔化しは通用しません。

誰とプレーしたか把握されてしまえば、税務調査で指摘された際は言い訳ができません。

繰り返しになりますが、ゴルフのプレー代を経費計上する際は、誰とプレーしたかを曖昧なままにしたり、誤魔化したりしないように管理しましょう。

ゴルフ会員権を持つ場合の経費処理4つの重要ポイント

開業医のゴルフ代イメージ

ゴルフには会員権という権利証券があるのは、多くの開業医の先生はご存知かと思います。

ゴルフ会員権は一般客(ビジター)より優先される、メンバー料金で利用できる、など特別な恩恵がある権利であり、医院としても購入可能な資産でもあります。

多くの医院の先生が持っているゴルフ会員権は節税手段にも使えますが、所有形態や使用実態によって経費処理が異なるので注意が必要です。

医療法人として会員権を持つ場合の経費処理とは?

医療法人としてゴルフの会員権を持つ場合、購入時や購入後にかかる経費をどのように計上すれば良いのでしょうか?

各々解説していきます。

入会金は損金処理ではなく資産計上

まず、ゴルフの会員権を購入する場合、入会金を経費として損金処理することはできないため、資産として計上する必要があります。

なお、医療法人が資産扱いとして購入したゴルフの会員権は、経年劣化する性質の資産ではないので減価償却としては認められていません。

年会費やプレー代は交際費に計上

一方で、年会費やロッカー使用代、各々のプレー料金などは、会員権の計上項目に縛られることなく交際費として計上することができます。

しかし、先に書いたように業務遂行上必要な接待でなく、個人の娯楽が目的であるならば、計上項目に関わらず交際費として計上することはできません。

医療法人の個人会員の場合の経費処理は?

会員登録の方法は、ゴルフクラブによって異なります。 場合によっては、個人会員としてしか登録できないゴルフクラブもあります。

その場合の経費処理はどうなるのでしょうか?

ゴルフ会員権の個人入会の場合、法人が支払った入会金については、特定の役員またはスタッフに対する給与として処理されます。

このように個人として会員となる場合と、医療法人として会員となる場合では取り扱いが異なるので注意しましょう。

ただし、入会が法人の業務遂行上必要であるため法人が負担すべきだと認められた場合は、入会金を法人が資産計上することができます。

個人医院・クリニックの開業医の先生がゴルフ会員権を購入する場合は?

個人開業の医院・クリニックの開業医の先生のゴルフ会員権については、会員権を資産計上したり、年会費を必要経費として計上したりすることができません。

プレー代については、先のように交際費として認められることはありますが、会員権については経費処理ができない点に注意しましょう。

ゴルフの会員権は課税対象か?

ゴルフの会員権をお持ちの方から「有価証券扱いなのか?」といったご質問を頂くことがあります。

権利証券である会員権は、株式・手形のように有価証券として見られやすいのですが、あくまでも会員とゴルフ場との間だけに有効な権利証券。

そのため、有価証券としては扱われません。

したがって、ゴルフ会員権を売買する場合の取引は、全て消費税が必要となる課税取引として扱われます。

不要になったゴルフの会員権を処分することで節税できることも

開業医のゴルフ代イメージ

1980年代のバブル時代、ゴルフ場によっては会員権価格が1億円を超えることも珍しくなく、資産としての一面も持ち合わせていました。

しかし、バブル崩壊後には会員権の価格が一気に暴落。

売却することなく、ゴルフをしない親族へ相続・贈与されることによって、現在ではゴルフをしない方が無駄に持っているケースも多いのです。

そこで本項では不要となったゴルフの会員権を処分することで節税が可能である、というお話をお伝えします。

もし、会員権をお持ちであれば、これからお伝えする内容が該当するか確認されてはいかがでしょう?

会員権を売却(譲渡)した時の所得は、譲渡所得として事業所得や給与所得などと合わせて総合課税の対象となります。

総合課税対象であるために、もし売買差で損失が発生したとしても事業所得などと損益通算が可能なのです。

なお、ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算については、「ゴルフ場が倒産していない」「法人名義である」など一定の条件があるので、担当の税理士への確認を推奨します。

なお、保有期間により課税金額は異なり、以下の計算方法によって金額を計算することができます。

<所有期間が5年以内(短期譲渡所得)>
売却金額-購入金額-譲渡金額-特別控除額50万円=課税金額
<所有期間が5年超(長期譲渡所得)>
売却金額-購入金額-譲渡金額-特別控除50万円 }×1/2= 課税金額

※損失が発生した場合、特別控除の50万円は適用されません

会員権のほとんどは1980年代のバブル期を絶頂に暴落しているため、10年以上前に購入した会員権であれば売買差で損失が発生するケースがほとんどです。

もちろん将来の価格動向は誰にも分かりませんが、今後数年間でバブル期のような金額まで高騰する可能性は限りなく低い状況にあります。

今お持ちの会員権を全く使っておらず、眠らせているぐらいであれば、譲渡や売却によって税金対策することをおすすめします。

【まとめ】 ゴルフの経費処理について正しく理解する

今回は、開業医の先生に向けて、ゴルフ代の重要ポイントについてお伝えしました。

  1. ゴルフのプレー代の交際費については、税務調査でチェックされやすい
  2. ゴルフ会員権については、個人の開業医の先生と医療法人で扱いが違う
  3. 暴落したゴルフ会員権を処分することで税金対策できるかもしれない

税金対策上、ゴルフ代の経費処理については会員権、年会費、プレー代など別々で把握しておく必要があります。

医院の先生にとってゴルフは同業者や取引先から有益な情報を得られるコミュニケーションツールにもなっていることでしょう。

業務上必要なものであれば、税金対策が可能になります。ゴルフの経費処理について、正しく理解するようにしましょう。

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プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢42人(R2年4月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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