はじめに

産婦人科の開業医の年収はおよそ2600万円から3000万円程度といわれています。2600万円という年収は魅力的ですが、他の科に比べると高くありません。さらに産婦人科は小児科同様、医師の成り手が多くありません。現在毎年のように日本の出生数は減少していますが、それでもまだ産婦人科医は足りないと言われています。

出産に携わる仕事ですので、1日に数時間の仮眠しか取れないこともざらにあり、年収はそこそこ高いもののそれをはるかに超える長時間労働であるのが現状です。昼夜問わず必要とされ、激務でもありますので、産婦人科医の成り手が不足するのも仕方のないことなのかもしれません。
近年、産婦人科では、リーダー医師、サポート医師からなるチーム制を取り入れているところも増えてきています。産婦人科も個人の医師が行うのではなく、これからはチームで行うことが主流になる時代が来るかもしれません。

開業資金に関しては、産婦人科は8000万円程度がかかると言われており、安易に参入がしやすいという分野でもありません。成り手が増えないため参入障壁も高くはありませんが、今後も産婦人科の開業医・勤務医が増えるということはあまり期待できそうもないように思われます。

勤務医の年収との比較

産婦人科の勤務医の年収は、年齢そして経験に比例しています。20代の方の多くは年収1000万円未満のようで600万円未満の方が多くなっています。ただ30代になってくると年収1000万円以上の方が半数以上となり、中には1500万円以上の方もいます。40代になるとほとんどの方が1000万円以上となり、2000万円近い方も半数程度出てきます。50・60代になっても年収に大きな変化はありません。

産婦人科は人材が多くありませんのでニーズは高い傾向にあり、年齢と経験を重ねれば必然的に年収は上がっていく傾向にあります。多くの病院で産婦人科医を必要としていますし、しっかり経営をしているところであれば高い年収を出す病院が多くなっています。ただ、激務には変わりませんので、注意が必要です。

案婦人科においては勤務医を5年から10年ほど行って開業する方もいますが、長期間勤務医として勤務をし続ける方もいます。開業のきっかけとしては、勤務医として自分の考えと病院の考えが異なること・仕事と年収がなかなか見合わないこと・あとは先輩医師や看護師などのスタッフの方との人間関係を解消したいなどの理由が多いようです。

産婦人科の地域別の勤務医の年収

地域別では、北海道・東北などの北日本と関東や関西などの都市部において、産婦人科医の勤務医の年収は特に高くなっています。北海道・東北は若い医師が少なく医師の高齢化状態が深刻にとなっていますので、当然ながら年収は高くなることが予想されます。また関東や関西などの都市部では、若い女性も多く出産をする方もそれなりにいます。それに比較して産婦人科医が不足しているということが、年収を上げている要因になっているものと思われます。一方、東海地方や北陸などの中部地方は地元へのリターン就職を強く推しているということもあり、地元に戻る医師も多いせいか、勤務医の年収は高くありません。

九州地方においては、明らかに産婦人科の勤務医の年収が低くなっています。九州地方・特に鹿児島や沖縄の出生率は全国トップクラスですが、これらの地域では産婦人科医がある程度充足していること、そして住民も含めた地域ぐるみで出産というものに対して向き合っていると言われており、医師の年収を高く上げる必要がないのかもしれません。

産婦人科医の医療施設毎の勤務医の年収

産婦人科の医療施設ごとの勤務医の年収は大学病院などの大病院では若い方ほど年収が低く、年齢や経験を重ねれば年収が高くなります。半数以上の方は年収1500万円以上になっています。ただ年収600万円以下の方もいます。クリニックも同様です。民間の一般病院が最も年収が高くなっていて大半が1000万円以上になっています。おそらく新人などの若い医師は大学病院などの大きな組織で働くため、年齢と経験を経た方が一般病院などに行くのかなと思われます。そうなってくると一般病院勤務の産婦人科医の年収は必然的に高くなります。

産婦人科の男女別の勤務医の年収

産婦人科医の数は女性が半数を少しだけ上回っています。女性の産婦人科医を希望される妊婦さんも多いと思われますので、需要に応じた結果と言えるでしょう。

年収は男性医師の方がやや高いようですが、経験に応じて年収が高くなるということは間違いなさそうです。

産婦人科の都道府県別の開業医の年収

都道府県別の開業医の年収自体のデータがないので現在調査中です。ただ医師全体の年収で見ると岩手や宮城などの東北地方が高く、富山や福井などの北陸地方で低めになっています。医師の需要度や医師の平均年齢が高い地域では、比較的年収が高い傾向にあるようです。

サラリーマンや自営業者などの年収の高い東京・大阪・神奈川・愛知といった地域でも決して高い方ではありません。「一般人が稼げる地域=医師が稼げる地域」という構図は基本的に当てはまりません。

産婦人科開業には8000万円程度かかります。

病院の勤務医から産婦人科を開業するとなると、少なくても8000万円程度かかります。少し余裕をもって1億円程度は用意しておかなければいけません。

開業するとなると土地や建物などの箱物だけで少なくても2500万円から3000万円くらいかかります。また妊婦さんのお腹の状態を診る超音波診断装置や、X線撮影検査器具などの診察器具や内診台や診察用ベッド、さらに待合室の椅子や受付カウンター、電子カルテなどの医療用具一式もそろえる必要があります。

そこに医師をサポートする看護師や助産師などの専門家も必要になります。受付や会計などの事務スタッフも必要です。備品だけでなく人的な面での整備をする必要も出てきますので労務コスト面もしっかりと考えておく必要があります。

開業医になると経営者になります。最初は銀行からの借り入れも必要になります。ある程度医院の売上が上がってきてもスタッフの給料と借り入れの返済で開業医自身の報酬がほとんど手元に残らない可能性もあります。

勤務医時代と変わらず忙しいにもかかわらず、年収は勤務医時代の数分の1程度もしくはそれ以下になってしまう方も多くいるのではないかと思われます。

実際に都市部の開業医は、開業後2年から数年で医院をたたんでもう一度勤務医に戻ってしまう方も多くいます。開業をするにはかなりの決心と覚悟が必要になります。

産婦人科は妊婦さんにどう寄り添うか

産婦人科医にとって大事なことは、出産のサポートはもちろんのこと、妊婦さんに対して適切な言葉をかけること、そしてデリカシーのないことは絶対に言わないなどの、医師として当たり前のことを当たり前にできるかということも大事になってきます。妊婦さん、特に初産の方は初めての妊娠出産ということもあって、精神的に不安定な時期を過ごすことになります。そのような時に大事なことは基本的な助言と的確なアドバイスです。この面で産婦人科医は女性の方が適していると言えるかもしれません。

それから、妊産婦の口コミも大事なポイントとなります。女性の口コミは良くも悪くも噂が広まりやすく、しっかりとフォローをして妊婦さんに信頼されるような医師になることが重要です。

日本ではいまだに年間50人から60人が出産で亡くなっているという現状があります。産婦人科は激務な中、判断力や慎重さがより一層問われる科目と言えるでしょう。

妊婦さんとお子さんの命を取り仕切る産婦人科の開業医は、責任はより大きいですが、とてもやりがいのある仕事といえます。

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プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢42人(R2年4月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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