はじめに

精神科の開業医の年収は1600万円程度となっています。他の科の開業医と比較してもあまり高くはないように見えます。

ただ精神科の開業医の場合は、他の科目よりもクリニックの開業資金をそれほど必要としない為、実質の収入が高い方が多く、大半の精神科の開業医の方が1300万円以上の手取り収入があるようです。

他の科の場合、開業後しばらくは開業時の借入金などを返済していかなければならないこともあって、そこまでの高い収入を望むことはできません。

ただ精神科の患者数は年々増えており、今や国民の9名から10名に1名程度が生涯において精神科にかかるのではないかともいわれています。
また慢性的な精神疾患を抱えている方も、国内に数百万人程度は確実にいることも分かってきています。潜在的な方も含めると実際にはもっと多くの方がそのような状況になっていると思われます。

今後、精神科を受診する方は減らないどころか、むしろ増加するのではないかと思われます。そうしますと個々の医師の診察の負担はますます重くなりますが、収入が上がる見込みもあると言えます。

勤務医の年収との比較

精神科の勤務医の年収は1200万円から1400万円くらいの間に入っており、他の科に比較してもやや低めの年収となっています。

20代の方で1000万円に届く方はほとんどおらず、30代になると収入の格差が広がってきます。医師の技量や病院の経営状態によっても年収は左右されますので、20代よりも30代の方が年収が下がることもまれにあるようです。

40代になると多くの方は1000万円以上になります。1500万円程度、もしくはそれ以上の収入の方も半数以上になってきます。精神科の勤務医はこの程度の世代が年収のピークとなっており、60代になってくると体力的な問題も出てくるため、年収はやや下がる傾向にあります。

精神科の勤務医は手術に必要な手先の器用さなどはあまり要求されませんが、反面、精神的に追い込まれている方の診療にあたりますので、強度な精神力を要求されます。この点で決して容易な仕事ではないといえるでしょう。

精神科の地域別の勤務医の年収

精神科の勤務医の年収を地域ごとに見ていくと、北海道及び東北地区が最も高くなっており、ほぼ全員が1000万円以上の収入となっています。また2000万円以上の方も2割程度はいるようです。

それに準ずるのが中部地方と九州沖縄地方です。この地域は北日本ほど高年収層の割合がやや低くなっていますが、ほぼ全員の方が1000万円以上を得ているという点では一緒です。

次に関西地区が高くなっています。ただ1000万円以下の方が1割程度おり、大半が1500万円程度で、2000万円以上の方はあまりいないようです。

そして関東地方と中国四国地方の年収は低くなっています。関東地方の半数弱は年収1000万円以下で、1500万円以上の方も4名に1名くらいとなっています。また中国四国地方は年収1000万円以下の方が4割程度います。年収700万から800万円程度に留まっている方も2割程度いますので、全体的に低いといえるでしょう。

一般的には関東や関西地域の求人が多く、また年収も高めになっていますが、医師の場合は美容外科など一部を除くと、北海道・東北・北関東地域・北陸などの日本の北半分の地域で求人や年収が高くなっているようです。これは医師に限らず弁護士などの専門職でも同じような傾向が出ています。

精神科の都道府県別の開業医の年収

都道府県別の開業医の年収自体のデータがないので現在調査中です。そもそも精神科の全国単位の開業医の詳細な年収データも見つかっていません。

ただ医師全体の年収で見ると岩手や宮城などの東北地方が高く、富山や福井などの北陸地方で低めになっています。医師の需要度や医師の平均年齢が高い地域では、比較的年収が高い傾向にあるようです。

サラリーマンや自営業者などの年収の高い東京・大阪・神奈川・愛知においても決して高い方ではありません。「一般人が稼げる地域=医師が稼げる地域」という構図は基本的に当てはまりません。

精神科の開業は2000万円程度でも可能

精神科の開業医の場合は、内科や眼科・耳鼻科や美容整形外科のような施設や設備を必要としません。このため2000万円程度での開業も実際には可能になっています。

施設面ではさほどお金を必要としませんが、それでも建物の確保と人件費はかかってきます。借り入れをした場合、開業後はその返済をしていく必要もあります。

物件の確保も容易ではありません。「病院=駅前や人の多いところに開院すれば患者さんは来るだろう」という見込みで行うことが、必ずしも正しい選択にはならないこともあります。

というのも、精神科の場合はどうしてもコンプレックスを抱えている患者さんが多いということもあって、人の多い駅前などの病院にはあまりかかりたくないという方も多くいるからです。むしろ「路地裏のひっそりとした院に行きたい」という方もいるでしょう。そのような患者さんのニーズもしっかりと汲み取ったで立地を考える必要があります。この辺りは判断が難しいところです。

また人件費は他の科と同様にかかります。まず看護師などの専門家も必要になります。それでも手が足りずに家族などに受付や会計などの事務を手伝ってもらう必要が出てくるかもしれません。

そして開業コンサルタントなどに開業サポートを頼むとさらに500万円から1000万円程度の資金がかかります。いくらお金があっても足りないかなと思われます。

開業医になると経営者になります。最初は銀行からの借り入れも必要になります。ある程度医院が稼げるようになってもスタッフの給料と借り入れの返済で、開業医自身の報酬がほとんど手元に残らない可能性も高くなります。

勤務医時代と変わらず忙しいにもかかわらず、年収は勤務医時代の数分の1程度もしくはそれ以下になってしまう方も多くいるのではないかと思われます。

実際に都市部の開業医は、開業後2年から数年で医院をたたんでもう一度勤務医に戻ってしまう方も多くいます。

精神科の開業医の場合はそこまで多くの資金を要さないので、そこまでシビアではないかもしれませんが、それでも病院経営をしっかりとしていくことは決して簡単なことではありません。

患者へのケアが大切

精神科の医師は特に患者さんへのケアが大事です。精神科に来る患者さんは、人を信用できないなどいろいろな面で傷ついています。家族からも突き放されたり見放されている方も少なからずいます。

医師の対応次第では自傷や加害、ひいては自殺などをしてしまう方も出てきてしまうと思われます。外科手術などの手技はあまり必要としませんが、患者さんへのケアなどと言った細かい気遣いが必要になります。

ただあまりにも真剣に向き合い過ぎてしまって自身が疲弊してしまう医師もおり、匙加減はとても難しいものになりそうです。

精神科の場合は内科などのように「急」を要するような患者さんは多くありませんが、徐々に精神が追い込まれていき、行動に出てしまう方も出てきます。また対人恐怖症の方もいます。

このような方へのケアをしていくことは、ひいては国の経済を間接的に上げることにもつながるのではないかと考えています。こうして考えていくと精神科の医師の果たす役割はかなり大きいと言えるでしょう。

ご相談・お問い合わせ

お問い合わせはこちらから

この記事の執筆・監修はこの人!
プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢42人(R2年4月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

こちらの記事を読んだあなたへのオススメ