はじめに

歯科の開業医の年収は1500万円程度の方が多いようです。

なかには4000万円程度を稼いでいる方もいるようですが、他の科の開業医の方に比べるとあまり年収は高いとはいえないのが実情となっています。

現に開業歯科医の中にも年収200万円以下の方も15%から20%ほどもいるのではないかと言われています。年収300万から400万円程度の開業歯科医は多くいると聞いたのですが、フリーターレベルの年収の方がこんなにもいるかもしれないという実態にはびっくりしています。

歯科はコンビニよりも多い店舗数が足かせになっているのは事実です。コンビニが全国に4万近くあるのに対し、歯科医院はいまや7万近くもあると言われています。開業歯科医師で高い年収を望むのは難しくなってきていると言えるかもしれません。

ただ、歯科医は歯科矯正などの自由診療が可能ですので、営業力次第で高い年収を得ることも可能です。ただ競争は厳しいのでとても大変なことは確かです。

歯科医師になるのは医師ほど難しくはない

医師と歯科医師を比較すると、学費の違いはそれほどではないにせよ、やはり学力的な面で大きな差があります。歯学部の方が医学部よりも明らかに入学しやすく、医師よりも歯科医師の方が容易になることができます。

また、医師になろうと医学部を目指し、何浪かした挙句、やはり「受からない」と方向転換して歯科医師を目指す方もいます。

そのため、歯科医師も歯科医院の数も多く、激戦になってしまいます。ですので競争が激化して収入が下がってしまう歯科医師の方が絶対数で出てきてしまうことは仕方のないことかもしれません。

歯科医師では開業しても稼ぐことが難しいという実情もありますので、他の科ほど「開業したい」という気持ちのある方は多くないのではないかと推測されます。

勤務医の年収との比較

歯科の勤務医の年収は800万円から1000万円程度の方が平均値であり、中央値でもあります。平均値の方がやや高くなっているようですが大きな差ではありません。

ただ上は1400万から1600万円程度、下は400万円から500万円くらいの方も多くなっています。若い歯科医師で経営状態のあまり良くない歯科医院に就職をしてしまうとこの程度の年収にとどまってしまうことも十分に考えられそうです。ただ開業歯科医ほど上と下の差はありません。

こうしてみると歯科医師の年収は医師全体の年収よりもかなり低く収まっている印象を受けます。

歯科の都道府県別の開業医の年収

都道府県別の開業医の年収自体のデータがないので現在調査中です。

ただ医師全体の年収で見ると岩手や宮城などの東北地方が高く、富山や福井などの北陸地方で低めになっています。医師の需要度や医師の平均年齢が高い地域では、比較的年収が高い傾向にあるようです。

ただこれは医師全体のことであって歯科医師にあてはまるかといえばそうともいえません。おそらく東京や神奈川などの都市部では稼げない開業歯科医も多く廃業を余儀なくされる方も多くいるのではないかと思われます。全国でも年間1600件程度・全体の2.5%程度の歯科医院が閉院しています。おそらくコストのかかる都市部ではさらに多くの割合になっているものを思われます。

東京などの都市部にやや多い

歯科医の地域ごとの在籍の特徴としては、東京で全体の歯科医師の15%ほどとやや多くなっていますが、地域的な偏りは大きくありません。大阪は東京の半分程度とやや少なめとなっており、最も少ない鳥取でも全体の0.4%弱はいます。東京と鳥取では人口も23:1程度なので、極端に鳥取で歯科医師が少ないという訳でもなさそうです。

歯科医師は東京にやや多いという印象で、その他を地方全体で見ていくと人口比に近いようです。全体として歯科医師不足で悩まされている地域はあまり多くはなく、葉裏を返せば歯科医師として生き残るのはどの地域においても容易ではないということです。

開業には少なくても6000万円程度はかかりそう


開業医として病院の勤務医から医院を開業するとなると、少なく見積もっても4500万円、通常6000万円から7000万円程度かかりそうです。

開業するとなると土地や建物などの箱物が必要になります。また検査器具や診察用具などの医療機器一式もそろえなければなりません。

さらに歯科矯正や審美歯科などの手術をするための機器もそろえる必要があります。

歯科医院は入院施設などをそろえる必要はないので自宅開業なども可能ですが、それでも一定の費用は必要になります。

歯科衛生士も必要になりますが、近年、優秀な歯科衛生士を確保することがとても難しく、特に開業したばかりの歯科医院となれば、スタッフ採用に相当な努力を割く必要があるでしょう。受付や会計など事務周りのスタッフももちろん必要になります。

そして開業コンサルタントなどに開業サポートを頼むとさらに500万円から1000万円程度の資金がかかります。いくらお金があっても足りないかなと思われます。

歯科医院も開業してしまうと他の医師同様に経営者になります。最初は銀行からの借り入れも必要になります。ある程度歯科医院が稼げるようになってもスタッフの給料と借り入れの返済で、開業医自身の報酬がほとんど手元に残らない可能性もあります。

さらに一般の病院や医院などよりも経営が厳しいということもあって、歯科医師で経営するのはさらに難易度が上がります。仕事も勤務医時代以上に忙しくなるにもかかわらず、年収は勤務医時代の数分の1程度もしくはそれ以下になってしまう方も多くいるのではないかと思われます。

実際に都市部の開業歯科医も他の医師同様に開業2・3年で閉院をしてもう一度勤務医に戻ってしまう方も多くいます。

開業をするにはかなりの決心と覚悟が必要になります。

歯科医師も手先が器用でなければならない

歯科医はまず手先が器用でなければなりません。医師ほどの知識は必要とされないものの、手先の器用さだけは絶対に必須です。手術・矯正・入れ歯を挿入するなどの細かい作業を行う必要がありますので当然ながら細かい手作業は欠かせません。

歯の手術は、食事を始めとする日々の生活面にかなりの影響を及ぼします。矯正の失敗は顔面神経痛などの原因となることもなり、クレームにもつながります。一歩間違えば歯科医院の存続にも関わりますので、歯科医にとって手先の器用さという技術はとても重要です。

また、歯科医師の方でも技術だけでなく、患者さんへの声かけやフォローなどを行う必要があります。せっかく技術があっても不愛想な医師だと医院全体の評判を落としてしまうことにもなりかねません。

さらに、歯科スタッフである歯科衛生士や歯科助手にもある程度の技術を求める歯科医院もあるようです。小さい歯科医院で歯科医師が1・2名しかいないところだと、特にそのスキルを求められそうです。歯科衛生士や歯科助手の中には技術面でついていけず、離職する方も多くいるとか。歯科衛生士や歯科助手の慢性的な不足の原因はこの辺りにも大きくありそうな気がします。

歯科医院はかなりの数がありますので経営面で生き残るにはかなりの努力と戦略が必要になりますが、生き残るところは必ずあります。少なくとも必要な技術をしっかりと身につけ、優秀な歯科衛生士を確保し、確実な診察を続けることが求められるでしょう。

 

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プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢42人(R2年4月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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