はじめに

医院・クリニックを経営する開業医の先生にとって、税務調査が入るとなれば「どう対応すればいいのか」不安になり、悩んでしまうのではないでしょうか?

しかし税務調査の具体的な対応を知って心の準備をしておけば、いざというとき慌てなくてすみます。

そもそもなぜ税務調査が行われるのでしょうか?そして、実地調査とはどのような流れで進められるのでしょうか?

また税務調査の時、調査官はどのようなところを主に調査しているのでしょうか?

ここでは税務調査の目的、流れとともに、見られやすいポイント5つについて解説していきます。

税務調査の目的

経営者にとって、できるだけ税金を払わないようにしたいと考えるのは当然のことです。

税法上定められた中での「節税」は悪いことではありません。しかし、現実には「脱税」という違法行為や、意図的でなくても法令の解釈の誤りによる間違いがあるものです。

こうした違法な申告やルール違反による不公平を是正するために、税務調査が行われます。

また、税務調査には違法行為に対する牽制の意味合いもあります。

つまり税務調査の目的は「公正な課税」と「牽制効果」なのです。
  

税務調査の流れ

税務調査は基本的に2日間で実施されます。2日間のケースを例に流れを解説します。

1.実地調査前

事前に実地調査を行う旨の連絡が来ることがあります。税務署から調査日の連絡があっても、都合が悪ければ別の日を指定できます。「繁忙期」などの理由でも、柔軟に対応してもらえます。

2.実地調査1日目

だいたい10時頃に調査官が来院します。最初の1時間は、医院やクリニックの成り立ち、患者の層、診療の内容などを簡単に説明する必要があります。調査官は特に仕入れや入金などのお金の流れに注目していることを意識しましょう。
その後、実際に帳簿の確認作業が始まります。この調査の対応は医療事務の社員と会計事務所の担当者に任せて大丈夫です。確認作業の最後には、調査2日目までに準備してほしい資料の用意を依頼される場合もあります。

3.実地調査2日目

初日と同じ時間に調査官が来院するので、前日に依頼された資料等があれば提出します。夕方まで実地調査が行われ、最後に2日間の調査内容について報告があります。この時点で調査が終了しなければ資料を持ち帰ってもらいます。追加資料を求められた場合には、できるだけ早く提出しましょう。

4.実地調査後

実地調査後、1週間~数か月で税務署からの問題指摘とそれに対する交渉(反論)を行います。

税務署からの指摘事項に納得できた場合
修正申告書を提出、追徴納税を納付

税務署からの指摘事項に納得できなかった場合
税務署と協議。認められず修正申告書を提出しない場合は、更正処分を受ける

税務署から指摘事項の報告がなかった場合
そのまま税務調査終了

税務調査で見られやすいポイント

1.売り上げの計上漏れ

単純ミスか意図的なものか、細かくチェックされます。

①自賠責収入の入金先

自賠責収入の入金先は請求ごとに個別に指定できるため、事業用口座以外にすることで収入の隠匿を図るケースがあります。意図的で大規模な収入除外であると認定された場合には、重加算税の対象となりますので注意が必要です。

②自由診療収入の除外

自由診療収入は、医院と患者間の金銭直接授受という特性から、過少計上や脱漏が生じやすくなります。当局には調査資料によって算定した標準的な自由診療収入割合のデータがあり、診察料や規模により一定の傾向が見られます。税務調査の際には、その標準データとの乖離の程度もひとつの目安となります。

③窓口収入の一部抜き取り

医療保険の患者自己負担は、外来診療の都度窓口で徴収するものと、入院費のように締日を設けて請求するものとに大別されます。これらは現金収受の形態をとるものが多いので、一部抜き取りの誘因が生じやすくなります。

しかし患者自己負担金と保険者が支払う給付金の割合は明確に定められており、給付金から逆算して患者自己負担金の推計は容易にできてしまいます。窓口収入と給付金のバランスに異常がみられる場合、当局の税務調査を招く誘因となります。

2.売り上げの計上時期

決算をまたいで次年度に計上するミスは意外と多いものです。
 

①その他の医業未収金

休日・夜間診療のように都道府県郡市医師会との契約が事業年度をまたがっている場合があります。しかし、平日・休日・年末年始で支払単価が決まっている場合は、受け入れた患者数を基に、期末までの医療収益を未収計上しなければなりません。
 

②入金サイクルが不定であるもの

入金サイクルが不定であるものを入金時に収益計上している場合、医業未収金の計上漏れとして、税務調査でよく指摘されます。

③クレジットカードによる収入

自費診療、高額医療費をクレジットカードで決済する場合、入金時でなく期末までに発生した収入を計上しなければなりません。

3.在庫の計上漏れ

仕入に対して在庫が少なすぎると怪しまれます。

①架空・水増し・仮装形状の有無

医院・クリニックにおいては、金額の大きさと扱い品目の多さから、薬品材料仕入に不正が集中する傾向があります。費用項目の税務調査で不正経理として大きな問題になるのは、
架空・水増し・仮装計上の3点です。
利益操作の温床として、税務調査では棚卸資産の期末計上額を厳しくチェックされます。
 

②個人消費・家事消費の有無

個人事業の場合、事業と家事費との按分が必要になるケースがあります。
主な対象は車両費・通信費・水道光熱費・借入利息・損害保険料です。按分の基準には絶対的なものはありませんが、事業と家事の使用割合、面積割合等に基づき按分します。

③リベート計上脱漏の有無

④翌期首以降仕入の繰り上げ計上の有無

4.交際費の使途

プライベートな使用に該当しないかなどチェックされます。
 帳簿と領収書を照合し、内容や相手との関係の説明を求められます。

5.架空の人件費

源泉徴収票やタイムカードなども確認されます。
医院・クリニックでの人件費で特に問題となるのは、アルバイト等を使った架空人件費の計上、専従者への不相当に高額な給与の支払い、非常勤医師の給与源泉の率や交通費の問題などです。

調査での留意点は以下の通りです。
①源泉所得税を免れる為に給与手当を過少に計上し、差額を別途賃金から補充していないかどうか
②他の経費科目に仮装した支出はないか
③専従者の業務内容は給与額に見合っている。

まとめ

不正さえしていなければ税務調査は恐れるものではありません。

税務調査が入っても堂々と対応できるよう、日頃から正しい経理処理を行い、確実に申告することが重要です。

そのためにも、日々の経理をしっかりていねいに行いましょう。

ご相談・お問い合わせ

お問い合わせはこちらから

                       

こちらの記事を読んだあなたへのオススメ