はじめに

以前は副業(兼業)禁止としている企業が多かったですが、終身雇用制度の崩壊等により副業を認める企業が増えてきました。

副業解禁とすることで、従業員が自己実現により生き生きと働ける、本業での新しいアイディアの誕生に繋がるなどのメリットを指摘する声もあります。

少なくとも「業務に支障が出ないのであれば、副業で収入を得ても問題ない」とするのが今の主流の考え方です。

例えば看護師がAmazonの転売ビジネスで儲けている、休日に料理教室を開いて収入を得ている……

このような個人事業主との兼業だけでなく、複数の会社と雇用契約するケースもあり、副業の形は様々です。

副業を禁止している医院・クリニックは多いですが、副業を理由に懲戒処分を下して、スタッフが納得するとは思えません。

労使間トラブルに繋がるのは目に見えていますから、就業規則で副業禁止を規定していれば見直しの余地はあるでしょう。

一方で「看護師やスタッフの副業を全面的に許すべきなのか?」と問われれば、その答えもNo.です。

クリニックにとって不利益になるような副業が存在するためであり、そのような副業は認めるべきではありません。

院長先生は、客観的な視点で認められる副業と、認められない副業を明確にする必要があります。

また、副業禁止するとしても、最近はそもそも副業になるのか否かが曖昧なお金の稼ぎ方も増えてきました。

そこで今回は、クリニックの院長先生がトラブル防止のために知っておくべきスタッフの副業について詳しくお伝えします。

デイトレ、不動産投資、アフィリエイト……これって副業!?

今は多様なお金の稼ぎ方があり、在宅ワークなどで簡単にサイドビジネスができるようになってきました。

多様なお金の稼ぎ方が出現したことで、「これはそもそも副業なのか?」と線引きが難しいものが増えています。

代表的なものに「仕事ではなくて投資ではないのか?」というもの、「不労所得も副業に該当するのか?」というものがあります。以下に詳しく解説していきます。

資産運用による運用益

オーソドックスなドルコスト平均法による積立投資による運用益や、株の売買による利益、株主優待……。

これらの資産運用による利益は、仕事ではなく投資による利益なので当然ながら副業には該当しません。

これを禁止してしまえば、株も買えない、FXもできない、積立投資もできない、保険も入れない……ということになってしまいます。

これではあまりにも理不尽ですし、院長先生も困るでしょう。

デイトレード

それでは株やFXなどのデイトレードのような、投資というよりは投機と呼べるようなものはどうでしょう。

デイトレードに関しても、上記の資産運用と同じ考えになるので、基本的には副業には該当しないと考えて良いでしょう。

ずっとPCに張り付いて株価や為替の変動をチェックしているイメージがあり、「明らかに労働じゃないか?」と思う方もいるでしょう。

しかし、株式投資やFX、デリバティブ取引は公務員でも禁止されていないことを考えれば、副業に該当しないと考えるのが妥当でしょう。

しかし、業務時間中にも関わらず、院内で長時間PCに張り付いて株価や為替の変動をチェックしているのであれば当然問題です。

明らかに、それは副業うんぬん以前の問題でしょう。

不動産投資による賃貸収入

不動産投資による賃貸収入については、こちらも資産運用なので副業でないと考えて良いでしょう。

「不動産投資で懲戒処分になった公務員もいるくらいだから、副業ではないのか?」

と思う方もいでしょう。たしかに、実際に公務員が不動産投資で懲戒処分を受けた例はあります。

しかし、これは不動産投資について人事院規則のルールがあるためです。

例えば独立家屋の数が5棟10室以上だった、年間500万円を超える賃貸収入があった場合です。

このように大きな規模での不動産投資になると、投資ではなく自営に該当すると人事院の規則で定められているのです。

公務員以外の職業で、不動産投資を副業と定義するのであれば、人事院の規則と同等の規定が必要になります。

ただ、開業医の先生でも税金対策も兼ねて不動産投資を行うケースは多いので、不動産投資を禁止するのは現実的ではないでしょう。

【不労所得】アフィリエイト、本の出版、ネットワークビジネス……

投資だけでなく、ビジネスでも副業に該当するかどうかがわかりづらいケースが増えてきました。

それがアフィリエイト、本の商業出版、それとイメージは良くないですがネットワークビジネスのような不労所得です。

結論から述べると、これらのビジネスで得た収入については、院長先生は副業とみなして構いません。

不労所得と呼ばれるビジネスについては、「労働する必要のない所得だから副業でない」と主張する方もいます。

しかし不労所得は、特に労働の有無で定義づけられた言葉ではなく、権利により受け取れる収入を意味する言葉です。つまり権利収入のことです。

例えばサイトアフィリエイトの場合は、一生懸命Webサイトを作って、記事を量産します。

本の出版であれば、著者は印税を手にする前から一生懸命原稿を執筆しています。

ネットワークビジネスであれば、一生懸命会員になってくれそうな人を探して営業(勧誘)します。

つまり、不労所得を得ている人達の大半は一生懸命労働しているのです。

これで「副業には該当しない」と考えるのはかなり不自然でしょう。

労働基準法と副業禁止は無関係

まず、副業禁止については、特に労働基準法で定められているものは特にありません。

基本的に労働基準法は経営者(院長)より労働者(スタッフ)を守る法律ですから、労働者にとって不利になる規定はできません。

しかし、一方で労働基準法では、「経営者は副業を認めなければいけない」という規定もありません。

つまり、これまで多くの企業が規定してきた副業禁止は、経営者が自ら就業規則で規定していたのです。

副業禁止の就業規則規定例

副業を解禁している一部のクリニックを除けば、おそらく多くのクリニックでは、次のような副業禁止の就業規則を規程していると思われます。

職員は、医院の許可なく在籍のまま、他の会社の役員もしくは従業員となり、または自ら事業を営むことをしてはならない。

就業規則でこのような規定があれば、副業を全面的に禁止していることになります。

副業を全面的に禁止するのは、スタッフとのトラブル防止の観点では現実的ではありません。

院長先生の立場で考えれば、忠誠を誓ってクリニックの業務に専念してほしいというのが本音でしょう。

しかしスタッフの立場で考えれば、副業禁止は業務時間外の行動まで拘束され、経済的自由を阻害されていると捉えられます。

後述するように全面的に解禁するのはNGですが、「院長の許可を得れば副業可能」とするなど、条件付きで認めることを推奨します。

上記の就業規則のままのクリニックは、見直しの余地が十分あるでしょう。

副業解禁は歓迎されるべき。しかし明確なルールが必要

多角的な働き方が認められた時代になっていること、終身雇用制度は崩壊していることを考えれば、副業解禁は大いに歓迎されるべきです。

しかし、だからといって全面的に副業を認めるというのは、クリニックにとって大きな不利益となりかねません。

これまで、多くのクリニックが副業を禁止してきた理由は次のようなものです。

  1. 副業により精神的・肉体的に疲労が蓄積され、業務に支障をきたす。
  2. 他社の従業員になることにより、クリニックに対して誠実で完全な仕事ができなくなり、クリニックの秩序を乱す
  3. 他社の従業員になることにより、クリニックの対外的信用や体面を傷つける可能性がある
  4. 競合するクリニックに就職するなど、就業で経営上の秘密が漏れることがある

副業解禁が増えてきた時代とはいえ、上記4つに該当する副業については、今でも認めるべきではないでしょう。

副業を解禁するにしても、①~④に該当する副業に関しては禁止して、院長先生の許可を得る旨をルール化しておくことが必要でしょう。

副業を認めてはいけない具体例

それでは、具体的に副業を認めてはいけない例を次に挙げます。

・Amazonの転売ビジネスに夢中になって夜遅くまで作業し、遅刻や欠勤が発生したり、業務中に居眠りしている。

・業務時間中に、仕事そっちのけでアフィリエイト収入を得るためにブログを書いている。(先に書いたように、業務時間中にデイトレなどの投資でPCに張り付くのは副業以前に勤務態度に問題があります)

・反社会的勢力と繋がるようなビジネスをしていて、クリニックの信用が傷つく可能性がある。

・法律に触れるようなビジネスをしていて、クリニックの信用が傷つく可能性がある。

・ネットワークビジネスのしつこい勧誘など、他のスタッフに迷惑がかかっている。

・患者の個人情報を必要とする副業。もしくは個人情報が漏洩する危険性が高い副業。

院長先生は、スタッフの副業については、「クリニックに不利益になるか、ならないか」を慎重に検討するようにしましょう。

パートタイマーの副業については、どう対応する?

正職員のスタッフですら、上記の禁止する理由①~④に該当しない限りは副業解禁が推奨される時代です。

1日の勤務時間が3~4時間、週2~3日出勤のパートタイマーに副業を禁止するのは不可能に近いでしょう。

実際にパートタイマーのスタッフの場合は、他の職場や個人事業主と掛け持ちしているケースも少なくありません。

しかし、パートタイマーでも重要なことは上記の禁止する理由①~④に該当しないことを確認することです。

特にパートタイマーの場合、他のクリニックと並行して勤務しているケースがよく見られます。

クリニックの秘密を外部に漏らさないよう、機密遵守誓約書を提出してもらう等の対応が必要でしょう。

【まとめ】クリニックに不利益にならない限りは副業は解禁する

以上、看護師やスタッフなど、クリニックで働く人の副業をどこまで認めるか?についてお伝えしました。

基本的にはクリニックに不利益になるようなことがない限りは、副業は解禁すべきでしょう。

業務時間外にどういう過ごし方をしようが、本人の自由であり、それを阻害するようなことがあればトラブルに繋がります。

副業を全面的に禁止しているクリニックは、スタッフからの信頼関係を担保できるよう、規程を見直すことを推奨します。

しかし、クリニックにとって不利益になるような副業は認めてはいけません。

原則的に副業を解禁しつつ、禁止する副業について明確なルール化を行い、周知・徹底するようにしましょう。

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