はじめに

医院やクリニックを開業されたばかりであると、何気なく決算月を迎える先生も多くいらっしゃるかと思います。

しかし、この決算月は医院として支払う税金が決定する重要な時期でもあります。

十分な利益を確保できていても、法人税を始め、様々な税金が課される決算月は、計上の仕方により税金負担が増え、資金繰りが悪化してしまう可能性もあります。

そのため、医院やクリニックを安定的に経営するためには、無駄な税金を抑えて、節税対策を行うことが先生にとって重要な取り組みでもあります。

そこで今回は決算月を控えた医療・クリニックの院長先生に是非ご覧いただきたい節税対策についてお伝えいたします。

少額減価償却資産による節税法

医院やクリニックを営業する上でどうしても必要となってくる備品。

机や椅子、コピー機やパソコンなど多くの設備が必要であり、それらは10万円未満であれば消耗品として計上できますが、それ以上だと減価償却資産として処理されます。

減価償却資産として処理された場合、定められた耐用年数に応じて購入価格を分割して計上することになりますが、場合によっては一括経費での処理が可能です。

それが、30万円未満である場合に可能な少額減価償却資産の特例制度。

この特例によって、青色申告事業者であれば、取得価額30万円未満である減価償却資産を取得した場合、その事業の用に供した年度の合計額300万円までを損金にできます。

減価償却より消耗品として計上し、一括経費とすれば、損金が増え、結果的に節税を実現することが可能となるのです。

この少額減価償却資産の特例を活用するためにも青色申告をしておき、節税対策を考慮できる環境を準備しておいてはいかがでしょう。

従業員還元による節税法

決算月が近づき、予想以上に利益が出ていたら「頑張ってくれた医師や看護師に還元したい」という院長先生もいらっしゃることかと思います。

そんな医院やクリニックにオススメな従業員に還元できる節税法、その代表的な例として「利益賞与」と「社員旅行」があります。

本項では利益賞与と社員旅行を利用した節税法について、お伝えします。

利益賞与を利用した節税法

医院やクリニックが医師や看護師に対して支払う給与や賞与は全額損金であるため、利益が出た場合、利益賞与として支給することにより節税が可能です。

決算日までに賞与を現預金で支給できれば問題ありませんが、医院によっては資金繰りの都合により、決算日までに賞与を支給できない場合があるかと思います。

そのようなときに活用できるのが利益賞与で、期末の時点で未払いであっても、以下の要件を満たすことで損金扱いとできるため、有効な節税対策なのです。

(1)支給額を各人別に、かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に通知する
(2)(1)の通知した金額を、通知したすべての使用人に対し、通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1ヵ月以内に支払う
(3)その支給額を、通知した日の属する事業年度において損金経理している

ただし、あまり過大に利益給与を支給してしまうと、内部留保が切り崩され、次期の医院経営に影響する可能性があります。

賞与金額について特に決まりがないため、内部留保(税引き後当期純利益から配当を差し引いた額に減価償却費など各種積立金や準備金を加えた額)の1~2割前後を推奨します。

期末を迎える時点で大幅な利益が出ることが判明しているのであれば、この利益賞与を支給することで節税が可能です。

利益賞与は、節税面だけでなく、従業員のモチベーションアップも実現できるため、オススメな取り組みです。

社員旅行を利用した節税法

前項の利益賞与という金銭的な面以外に、社員旅行の旅費を会社で負担し福利厚生費として経費にすることでも節税は可能です。

ただし、社員旅行費が福利厚生費として計上するためには、次の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 4泊5日以内であること(海外旅行の場合、外国の滞在日数が左記であること)
  2. 工場や支店ごとに行う場合は各職場で人数の50%以上が参加すること
  3. 旅費が社会通念上許される範囲であること(目安は会社負担10万円以内程度)

社員旅行の旅費が当期の費用として扱われるのは、その期の間に行ったときに限ります。

なお、決算間際になって旅行会社に旅費だけ支払い、翌期に社員旅行へ行ったとしても、代金は前払金(資産)扱いとなりため、当期の費用とならず福利厚生費になりません。

期末に利益が見込めそうな時には、社員旅行を節税対策として利用できるように、あらかじめ会社の年間イベントとして計画しておくことをオススメします。

なお、社員旅行を福利厚生費として認められるには先ほどの条件にもあったように限度があるため、「交際費」の計上も効果的な節税です。

交際費は中小企業である場合、2013年4月1日から年間800万円を上限として100%損金計上が可能となりました。

普段から交際費をあまり使わない医院やクリニックであるなら、社員旅行の遊びの際に活用するのもひとつの手です。

短期前払費用の特例による節税

前払費用とは、一定の契約で継続的にサービスを受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時において、まだ提供を受けていないサービスに対応するものです。

通常であれば、前払費用は支出したときに資産として計上し、サービスを受けた時に損金額として算入されるため、次期分の繰り上げは認められておりません。

しかし、短期前払費用という特例制度により、前払費用のうち、支払った日から1年以内にサービスを受けるものはその支払時点で全額損金として計上が可能となります。

たとえば、黒字決算であることが明確であるならば翌年分の駐車場代や家賃を一括前払いすることで損金計上し、節税することもできます。

つまり、次期に掛かってくる損金を前倒しで計上するという制度であるのです。

このように短期前払費用は決算間近の節税対策として有効ですが、適用条件を満たす必要があるため、注意が必要です。

短期前払費用4つの適用条件

短期前払費用として特例を受ける場合、以下の4つの要件の全てを満たす必要があります。

  1. 一定の契約に従って継続的に提供を受けること
  2. 役務の提供の対価であること
  3. 翌期以降において時の経過に応じて費用化されるものであること
  4. 現実にその対価として支払ったものであること

短期前払費用の特例は継続して適用する必要があるため、「利益が出た期だけ1年分を前払いする」というような処理の仕方は認められません。

もし、決算間近で制度を適用する場合、以上の条件を満たしているか確認した上で、計上しましょう。

小切手・手形での支払いも対象

短期前払費用の支払いは、現金だけではなく小切手・手形の振り出しも含まれます。

小切手・手形を振り出した場合、原則として取り消しができないため、未払金とは性質が異なる支払い方法として認識されています。

そのため、小切手や手形を振り出し、期末時点で未決済であっても、すでに支払ったものとしてみなされるのです。

この短期前払費用の特例制度は次期に損金となるものを前倒しで計上するだけのことなので、計上するタイミングの違いでしかありません。

場合によっては節税の効果は薄くなることもありますが、もし黒字決算が目に見えており、損金計上できそうな費用があれば検討されてみてはいかがでしょう。

まとめ

今回は、決算間近でも対策可能な以下の節税に関する内容をお伝えしました。

  1. 少額減価償却資産による節税
  2. 従業員還元による節税
  3. 短期前払費用の特例による節税

医院経営をされている多くの先生は、決算月に多くの処理に追われてしまい、つい決算対策を怠ってしまいがちです。

この度お伝えした節税対策も間近で対応可能ですが、基本的には決算月の数ヶ月前からスケジュールを立てた上で余裕を持って実行するのがオススメです。

ぜひ、今回お話したことを1つでも取り入れて、医院経営における節税を実現できればと思います。

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