透析内科の開業医・勤務医の年収は?開業資金や注意点も詳細解説

公開日:2019年6月8日
更新日:2024年3月18日

透析内科で開業しようと考えている先生に向けて、開業医・勤務医の年収、開業資金の目安、注意点について解説します。

ただし、透析内科を標榜していなくても、透析治療に力を入れている腎臓内科や泌尿器科も含めてお伝えします。

少子高齢化の流れとともに日本の透析患者の数は年々増加しており、2020年現在透析患者の総数は347,671人となっています(日本透析医学会の調査より)。

そのため、今後も透析治療の需要は一定の高水準と考えられますが、一方で厚生労働省はQOL(生活の質)向上のため、透析患者を減らす方針です。

また、一般的な腎臓内科や泌尿器科よりは開業資金が高くなります。

専門性の高さもありますが、透析内科を標榜するクリニックが比較的少ないのは、このような事情もあるかもしれません。

透析内科の開業や年収については比較的情報が少ないですが、現在の傾向を踏まえてお伝えします。

※本記事で出している年収額や開業資金などの金額は、あくまで目安として参考値として捉えてください。

透析内科の開業医・勤務医の年収

透析内科を標榜している病院・クリニックが多くないためか、開業医・勤務医ともに年収の公的な調査結果はありません。

泌尿器科については、独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(2012年)によると、勤務医の平均年収は1,078.7.万円です。

ただ、この金額は、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科と合わせた4つの診療科目の平均値となっているので目安でしかありません。

ただ、透析内科や腎臓内科などの求人情報を見ると、勤務医では1,500~1,600万円程度、経験のある先生で2,000万円程度の年収が提示されていることが多いです。

これは、勤務医の平均的な年収と大きく変わらない印象です。

また、開業医の年収についても多少の幅はありますが、だいたい2,000~3,000万円と、他の開業医とは大きく変わらない印象です。

なお、透析内科の保険点数については、診療報酬改定のたびに引き下がっている点は注意が必要です。

透析内科の今後の可能性

冒頭でもお伝えしたように、年々透析患者は増加しているので、今後の透析治療の需要は十分見込めると考えられます。

※日本透析医学会資料より抜粋

具体的には、上の図のように、慢性透析患者数と人口100万対比については1968年から50年以上増加傾向です。

※日本透析医学会資料より抜粋

ただ、透析患者の平均年齢の推移についても、1983年は50歳を切っていましたが、2020年現在は69.4歳で、高齢化が進んでいます。

そのため、今後は患者数の減少が考えられ、特に今は冒頭でお伝えしたように厚生労働省が透析患者を減らす方針です。

人工透析というと、患者さんが引っ越さない限りはずっと通院するので、安定した医業収入となるイメージが強いです。

しかし、上記のことから医院経営の立場では患者減のリスクも十分あります。実際に今後は透析患者数が減少すると見込まれると言われているくらいです。

透析患者は病状が重い場合が多いので、途中で亡くなったり、通院できなくなったりして患者数が減少することも考えられます。

とはいえ、今後の透析治療のニーズが大きく減少することも考えにくく、比較的競合も多くないので、透析専門医として十分実績のある先生であれば、将来性は十分あるでしょう。

なお、内科、腎臓内科、泌尿器科などの専門医となったあとに、日本透析医学会の専門医試験に合格すれば透析専門医となります。

透析専門医の人数は、2022年2月現在全国で6,223人、施設数は1,178件となっています。

東京都内では1,117人、施設数は133件となっています。(日本透析医学会名簿より)

泌尿器科の開業資金の目安

一般的な腎臓内科や泌尿器科に比べて、透析内科の場合、開業資金は高くなる傾向があります。

クリニックの開業資金は、物件でも大きな差が出ますが、内装や医療機器でも大きな差が発生します。

透析内科の場合も、透析ベッドや人工透析用の医療機器が欠かせないので、透析治療のない腎臓内科や泌尿器科に比べて開業資金が高くなります。

透析内科特有の工事費を考慮すると、開業資金は8,000万~1億円くらいを見込んでおくといいでしょう。

この点は、CTやMRIを導入する脳神経外科と特徴が近いかもしれません。

このため、損益分岐点に達するまでに時間がかかりますので、開業時は開業直後の運転資金を多めに用意しておく方が無難でしょう。

透析内科開業の主な注意点

透析内科の開業で一番気になる点は、開業資金ですが、それだけに開業時は計画的に準備を行う必要があります。

ここでは、透析内科の注意点について簡単にお伝えします。

人工透析を専門としていることを認知させる

先ほどお伝えしたように、透析治療を受ける患者さんの数は増加傾向にあるため、透析専門医の需要は高くなっています。

そのため、人工透析を専門としている点は、クリニックの大きな強みとなりますし、それだけ開業資金もかけていますから、地域の患者さんに認知するようにしましょう。

地域の患者さんがアクセスしやすい場所に開業する

開業する地域に透析患者数が多いことや、人工透析専門の競合クリニックがどれくらいあるかは重要な要素です。

透析の患者さんの多くは、近くの病院やクリニックを探します。

特に透析患者は年々高齢化していますので、アクセスのしやすさも意識するようにしましょう。

地域の病院との連携

地域の透析患者数もそうですが、地域の大きな病院の腎臓内科や泌尿器科と連携できる距離かどうかも考慮しましょう。

後述する駒沢腎クリニックは、自分の2つの出身病院とちょうど中間くらいの距離に開業しています。

大きな病院からの紹介があるかどうかも考慮して、物件を選定することも必要です。

透析時間による患者さんの精神的負担を考慮する

全陣腎協によれば、透析施設での血液透析は週3回、1回4時間程度が標準的と言われています。

これだけの透析時間になると、患者さんの精神的負担も考慮する必要があります。

そのため、Wifi設備やテレビを設置したり、リラックスしやすいベッドを設置したりするなど、患者さんの精神的な負担を軽減するようにすると患者満足度が上がります。

患者さんの精神的負担の軽減は、資金を投資しなくてもできることが多いです。

透析内科開業事例

弊社の人工透析専門の医院・クリニックの開業事例として、駒沢腎クリニックを紹介します。

駒沢腎クリニックは、一般内科外来や訪問診療も行っていますが、人工透析を専門としたクリニックです。

出身大学の病院の透析室が一杯になったことがきっかけで人工透析専門のクリニックを開業しました。

開業までの経緯や、現在の医院経営について、詳細をインタビューしていますので詳しくは下記の記事をご覧ください。

【関連記事】医療法人社団 良優会 駒沢腎クリニック

【まとめ】競合が少ないとはいえ開業物件の選定は慎重に

以上、透析内科の勤務医・開業医の年収と開業資金の目安、注意点についてお伝えしました。

人工透析については、年々患者数が増えている一方で、今後は減少に転じるとも言われています。

また、QOL向上のため、厚生労働省は人工透析の患者数を減らす方針なので、長期的な需要は意見の分かれるところです。

しかし、専門性が高く深刻な病状を扱う診療科目であるため、今後も一定の需要は見込まれると考えられます。

また、透析内科といえば気になるのは開業資金です。

他の診療科目も一緒に標榜するのか、開業後の運転資金はどうするのかも含めて、治療方針を十分に定めて開業準備をするようにしましょう。

なお、以下の記事も併せてご覧ください。

【関連記事】在宅医療(訪問診療)の開業医・勤務医の年収は? 開業に必要な資金や重要ポイントは?

【関連記事】泌尿器科の開業医・勤務医の年収は? 開業資金や注意点も解説

透析内科の開業をお考えの先生は、ぜひご相談ください。

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

こちらの記事を読んだあなたへのオススメ