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はじめに
「ついに、念願だった開業を無事に済ますことができた!
さあ、これから頑張るぞ!しかし、実際に開業してみたら患者が意外と来ないな。どうしてだろう?」
医院開業1~2年の時期、このように患者さんが思うように来ないとおっしゃられる開業医の先生も少なくありません。
これは集患の必要性に気付かないまま開業する先生が、非常に多いのが原因ではないかと思われます。
集患を意識するのは、開業前の物件を選定している段階くらいではないでしょうか。
たしかに患者さんに来てもらうのは、立地条件はとても重要です。しかし、集患対策はこれで終わりではありません。
立地条件の良い場所で開業しても、「思うように患者さんが来ない」と悩んでいる開業医の先生は非常に多いのが現状です。
それでは、どのようにしたら患者さんが先生のクリニックに来るようになるのか。
そのためには、集患・増患対策で注意すべきポイントを把握しておく必要があります。
今回は、特に開業1~2年のクリニックの先生が、集患・増患対策で注意するべきポイントをいくつか挙げてみたいと思います。
クリニックの集患とラーメン店の集客は全然違う
まず、開業したばかりのクリニックの先生が意識しておくことがあります。
医院の集患とラーメン店の集客は全然違うということです。
どういうことかというと、近所に新しいラーメン店ができた場合は、
「なんか近くに新しいラーメン店ができたみたいだ。行ってみようかな」となります。
そして、そのラーメンがおいしければ「近所においしいラーメン店ができた」と口コミで広がっていくでしょう。
しかし、近所に新しいクリニックができた場合はどうなるでしょう。
まず、「なんか近くに新しいクリニックができたみたいだ。行ってみようかな」なんて会話は聞いたことないですよね。
ラーメンというのは、毎日の食事で関わりのあるもの。日常的に人々が興味・関心を持つものです。
しかし、クリニックというのはどうでしょう?
病気や怪我でもしない限り、興味を持つことはないでしょう。
特に何か病気を持っているわけではなくて、健康な体で毎日過ごしている人にとって、クリニックは関心がないのです。
日常関心がないわけですから、どんなに立地の良い目立つところに開業したとしても、人々の記憶には残りません。
当然チラシを撒いても、商店街や老人会に告知して回っても、健康体の人には響きません。
どうやって患者さんはクリニックを探すのか?
病気や怪我、例えば風邪を引いて「内科を探したい」と思ったとき、患者さんはどのようにクリニックを探すでしょうか?
多くの人は、まずネットで、しかもスマホで検索すると思います。
例えば新宿に住んでいる人が風邪を引けば、「新宿 内科」と検索します。
いまでは、地域名を入れずに、ただ「内科」と検索すれば近所の病院が自動的に上位表示されるようになっています。
大事なことは、患者さんに検索されたとき、ちゃんとGoogleで上位に表示されるか。言うまでもなく、これが大切になってきます。
どんなに立地の良い場所で開業したとしても、ネットで検索してたどり着けなければ、患者さんは来ません。
もはやクリニックはSEO対策だけでは不十分?
「よし、では少しお金をかけて、ホームページを作ってSEO対策をばっちりやっておこう!」
ここまで読んだ開業医の先生は、そのように思ったかもしれません。
もちろん、これはクリニックの集患・増患対策では大切なことです。
ホームページをWordPressでSEO対策やユーザビリティを意識して作ることで、ある程度の効果は得られるでしょう。
しかし、SEO対策だけでは十分な対策とは言えません。
お手元のスマホで、実際に病院を検索して探してみてください。
上の画像のように、まず最初に出てくるのはグーグルマップではないでしょうか?
順番的には、PPC広告の次にグーグルマップ、そして通常のオーガニック検索となっているでしょう。
そして、上位表示されたグーグルマップは非常に目立ちますよね。
実際に、グーグルマップ専用枠で上位表示された場合のクリック率は、PPC広告の7.5倍、通常検索の9倍と言われています。
※博報堂Dyグループ・スマートデバイス・ビジネスセンターのデータによる
このように、グーグルマップ専用枠に上位表示されるような対策をMEO対策と言います。
SEOがSearch Engine Optimizationの略であることに対し、MEOはMap Engine Optimizationの略です。
医院の集患に限らず、飲食店や整体院、エステサロンなど実店舗の集客では、MEO対策は非常に重要になってきています。
なんといっても、クリック率で考えてもPPC広告の7.5倍、通常検索の9倍もの効果が期待できるわけです。
しかも、PPC広告よりお金をかけなくて済むので、費用対効果は抜群です。
まだMEO対策をしておらず、初診患者の集患に悩んでいる開業医の先生は、ぜひ検討しておきたいところです。
開業医のマーケティング戦略は立地条件によって違ってくる
先に書いたように、立地条件の良いところに開業したからといって、思うように患者が来るとは限りません。
開業した場所に併せたマーケティング戦略も必要になってきます。場所によって、ターゲットも変わってくるからです。
例えば、銀座や丸の内など都心のオフィス街に医院を開業した場合は、周辺に住宅が少なく企業が多いわけです。
オフィス街を歩いている人の大半は住民ではなく、サラリーマンやOLなので、サラリーマンかOLをターゲットにする必要が出てくるわけです。
その場合、例えば周辺企業を訪問して挨拶まわりをしたり、先に書いたようにMEO対策を含めた検索エンジン対策が有効になってきます。
サラリーマン向けにインフルエンザの予防接種や健康診断を安く行って、口コミを誘導するのも良いでしょう。
一方、駅からほど遠い地方都市のクリニックではどうでしょうか?近隣の住民が、車や自転車で来院することが考えられますよね。
そうなってくると、信号待ちの発生する交差点など、交通の要所に看板を設置するといった対策が有効だったりします。
地元の商工会議所に顔を出したり、地域のコミュニティ誌にコラムを書いても良いでしょう。
地方都市の場合は検索エンジン対策が不十分なクリニックが多いでしょうから、早めに検索エンジン対策をしておくと、すぐに上位表示されます。特にMEO対策は効果がすぐに出てくると推測されます。
このように、どこで開業したかによって、クリニックのマーケティングや広告戦略は全然違ってくるのです。
立地条件に併せた集患・増患対策を考えるようにしていきましょう。
患者はめったにクリニックを変えないが……
先に「人間は病気になるまでクリニックに興味を持たない」という話をしましたが、もうひとつ、思うように患者さんが来ない理由があります。
それは、患者さんは滅多なことではクリニックを変えるようなことはしないということです。
クリニックと患者さんの信頼関係は、通常のビジネスにおける顧客との関係よりも、ずっと強いです。
美容院やエステサロンだと気軽に変えるかもしれませんが、クリニックはよほど不満などがないと変えません。
実際に自分を振り返っても、周りを見渡しても、皆さんずっと同じクリニックに通い続けます。
近所に新しいクリニックを新規開業したとしても、なかなか患者さんは振り向いてはくれないでしょう。
クリニックに通うターゲットとしては、高齢者を一番に思い浮かべるかもしれませんが、高齢者ほどその傾向が顕著です。
それでは、新規開業しても永遠に患者さんは来ないではないか!そう考えるのはまだ早いです。
もう1つ、クリニックなどの医療機関のマーケットの特徴として挙げられることがあります。
診療圏がとても狭いという点です。
都心や全国主要都市の駅前で半径500m~1km程度、郊外や地方都市でも3~10km程度です。
さらに来院患者数を距離別で統計を取ってみても、半径1km以内で65%を占めているというデータがあります。
病気や怪我などで体の調子が悪いのに、わざわざ遠くのクリニックには通いたくはないでしょう。
つまり、この狭い診療圏のなかに競合となるようなクリニックがなければ良いのです。
新規開業した際は、診療圏は狭いということを認識したうえで、マーケットの戦略を練っていくと良いでしょう。
しかし、都心や全国の主要都市の駅前になると、この狭い診療圏のなかでも競合が多い可能性も高いでしょう。
そのときは開業時、ただ内科とか外科という区分けではなく、「女性専門」「糖尿病専門」など、ターゲットの絞り込みが必要かもしれません。
クリニック同士が連携して地域医療を支える
ターゲットを絞り込み、クリニックの専門性を高めていくメリットは競合を避けることだけではありません。
クリニックの専門性を高めていくことで、近くのクリニックと連携することが可能になってくるからです。
つまり、近くのクリニックは敵ではなく協力関係にあると考えて良いでしょう。
実際に、最近は近所のクリニック同士が上手に連携を図り、地域医療を支えているような例は増えています。
少子高齢化の影響で、全体的に患者数は増えています。総合病院では対応しきれないくらいになっています。
にも関わらず、高齢者の多い地域ほど、開業するクリニックの数は増えていません。患者数の増加に、クリニックの数が追いついていないのが現状です。
また、各診療分野の専門性が一段と上がり、1つのクリニックで対応できる範囲に限界が生じてきています。
これは少子高齢化の日本では大きな課題になっているところですが、クリニックにとっては連携のチャンスと言えます。
「思うように患者が来ない」という先生の悩み。じつは思い込みに過ぎず、周りのクリニックを見渡すと、連携という形で解決できるかもしれません。
まとめ
以上、開業したクリニックの集患・増患の注意点について書きました。
・病気にならないとクリニックには興味を持ってもらえない
・患者はクリニックを探すときはネットで検索する
・SEO対策だけではなく、MEO対策も視野に入れる
・立地によってマーケットの戦略は変わってくる
・患者はめったにクリニックを変えないが、診療圏は狭い
・近くのクリニックは敵ではなくて、協力関係になれるかも?
少子高齢化の加速で、医療機関のニーズは留まることはないと思います。
「思うように患者が来ない」とお悩みの開業医の方の大半は、単に患者さんに知られていないだけではないかと思います。
先生を必要としている患者さんは、きっと身近にいるのではないかと思っています。
今回お話したことで、改善が必要と感じたことは、ぜひ課題として取り組んで、集患・増患に活かしてください。
ご相談・お問い合わせ

- 笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢42人(R2年4月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。
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